ティオがのび太の助けによりサカディの試合に何とか勝利出来たその日、ドラえもん達はマヤナ国で一夜を過ごす事にした。
ティオにそれぞれ寝室を借りて皆寝入っていたが、のび太は眠れず起きていた。
サカディの興奮が醒めないのか、もし負けていたらと恐怖を覚える。
一回り歩いてくれば気分も紛れるだろうと思い部屋を出た。王宮内をうろうろしていると、表の階段に一人座るティオの姿があった。
何をしているのだろう?
のび太は側に行ってみた。
「どうしたの?」
「ノビタ……」
一瞬、虚ろ気だった瞳は慌ててのび太の姿を捉えた。
「眠れないの」
「ノビタこそ」
「まあね」
のび太は隣に腰掛けた。
「考えていたのだ。今日のサカディは、ノビが助けてくれなければ私は命を落としていたと」
ティオが僅かに震えていた。確かに怖かった。だが、助けなど本当は欲しくなかった。マヤナ国の王になるべく為に自分の力を示したかったのだ。
「礼を言う」
やけに素直なティオ。のび太は少し複雑に思った。友達なんだから助けるのは当たり前だと。
ふとティオがこちらをじっと見ていた。
「ノビタ。カツラはどうしたんだ?」
「えっ、あっ!」
その言葉にのび太はドキッとして、自分がカツラを付けていないのに気付いた。寝る時はさすがに誰も見ていないだろうからカツラを取っていたので付けるのを忘れていた。
「大変だぁっ」
慌てて取りに戻ろうとして止められた。
「心配ない。こんな時間に誰にも見つからない」
「そうかな」
のび太はティオを見た。
見れば見る程似ている。こうして二人が並ぶと本当に瓜二つである。
「しかし、似ているな」
「そうだね」
けれども性格はまるで違う。背負ったものも違う。異世界の興味。だから、羨ましかった。そして、欲しかった。
「……ノビタ。サカディをやらないか?」
「えぇッ!?」
ティオが立ち上がり笑った。驚いたのび太は困惑した。
負けた者は勝った者の言う事をなんでも聞かなければならない。
「そんな、無理だよ」
第一、ティオに何かを求めていない。必死に止めさせようとするのび太を見てティオは笑った。
「ははは、冗談だ。正式な手筈無しにサカディは出来ないよ」
そう言われ拍子抜けしてしまった。
「じゃあもし僕とサカディをして勝ったら、何をしたの?」
気になって尋ねるも、ティオは答えてくれなかった。
「こんな事をしていたら夜が明ける。もう休もう」
ティオはのび太を促した。
小さな小さな変化。
本人が気付かないくらいの気持ち。
信ずる友。
君は、なってくれるか?