2011/01/18
マティレオ
似たり寄ったりな上に続きが書けないマティレオ…(ノ_・;)
愛に怯えている。知らない感情を否定して、自分の殻に閉じこもったまま。
どうか、
拒絶をしないで。
受け入れて。
そんな悲しい顔をしないで……。
マティウスはいやに不機嫌だった。戦況が思わしくない訳でもなく、寧ろ順調で確実に勝利に近付いている。兵士達が粗相をした事もない。それなのに苛々とまるで人の話を聞いていない。戦況報告の意味がなくなってしまう。これからが重要だと言うのに。レオンハルトは軽く溜息をついた。
「陛下。気分が優れないのですか? それならば少し休息をとられては」
レオンハルトの言葉に、マティウスはあからさまに怒りを顔にした。
「煩い。もういい下がれ」
仕方なく素直に従った。
一体何を苛ついているのかサッパリ分からない。どうしたものかと思いながら、軍事会議室へ向かった。するとボーゲンが暇そうに一人でチェスに興じていた。
「お〜、ダークナイト。相手をしてくれ」
「また遊んでいるのか」
いつもの事ながら呆れてしまった。ダークナイトが指揮を取ってからというものの、ボーゲンはそれっきり軍事を任せっきりである。助言や、兵の教養などをしてくれてはいるが。
「良いじゃないか。あ、でも手加減しろよ。お前異常に強いからな」
仕方なく少しだけ付き合う事にした。ついでに情報収集をする。
「陛下の機嫌が良くない。何か知らないか?」
「さあな〜」
「特に不祥事も起きていない」
「まー、別に負け戦でもないところ……」
手加減されているのをいい事に、ボーゲンは勝ちにきた。
「例の発作、かねぇ。そら王手!」
「発作?」
レオンハルトは聞き返した。何か病を患っているなどとは聞いた事がないし、そんな素振りも今まで見た事もない。
「昔の過ちさ。狂愛ってのは恐ろしいもんだぜ」
チェックメイトと同時に、ボーゲンは意味深に笑った。
結局負けてやった事で機嫌を良くしたボーゲンから、発作の事を聞いてレオンハルトは後悔していた。
マティウスは母親を愛していた。だが、応えてはもらえない。母親を奪う父親が憎かった。だから、父親を殺した。しかし母親も後を追うように自殺。結局何もかもを失った。
その時からマティウス一人なのだ。孤独に生きていくしかなかった。
それが振り返して、平常ではいられないのが今の状態だとボーゲンは言った。
異常な愛。歪んでいる。こんな事を知りたくなかった。
「哀れな……」
そう思わずにはいられなかった。決して知られてはならない感情。ばれたら非情な性格からして命はないだろう。
多分今まともにマティウスの顔を見れない。この後の対面でどんな顔をすればいいか分からなかった。だが、支障をきたしてはならない。気持ちを切り替えてレオンハルトは仕事に戻った。
書室でフィン征圧に向けて送り込む兵士の数をもう少し増やしたらどうだろうかと私案していると、侍従からマティウスが呼んでいると知らせを受けた。いよいよきたかと緊張した。
マティウスの元へ向かう。気怠そうに玉座に座っていたのを見て、また難題を言い付けられると確信した。
冷静を保とうとしても、けどられてしまうのではないかと、どこか焦りが生じる。
マティウスは見透かすようにレオンハルトを見ていたが、何も言わなかった。
「兵士にフィン総攻撃の準備をさせろ。一気に畳み掛ける」
「へ、陛下、それはまだ時期ではありません」
突然の命令によりレオンハルトは驚き焦りを隠せなかった。
今総攻撃を仕掛けても、大戦艦が完成していない状態では分が悪い。
「ならばお前がその時期を作れ」
何とも無茶苦茶な注文である。マティウスは困るレオンハルトの顔を見て笑った。意地悪い、からかうかのような態度。意外にも機嫌がなおっているようだった。
「さすれば、今暫くの有余を」
レオンハルトは頭を下げた。だが、いつまで経ってもマティウスからの有無はない。不審に思い顔を見上げると、とても冷めた、人を人とは思わない恐ろしい目付きでレオンハルトに言った。
「貴様は、いつから私を哀れむような身になった?」
レオンハルトは凍り付いた。
やはりマティウスは見透かしていた。