2011/01/02
戦士と子シーフ(1

《そんなくだらない理由》

「やーっ!」
 朝っぱらからぐずる泣き声に貴重な睡眠時間を妨害された戦士は、仕方なくベッドから起きた。
 あの声はシーフである。またか、と溜息をついた。たいていは白魔と喧嘩しただの何だので、負かされて泣いているのだが、どうやら事情が違うらしい。当人らの部屋へ行くと。
「なあほら、シーフは男の子なんだから」
「やだ、やだ、やだ」
 ぐずるシーフをあやすモンクと、そのモンクの後ろにべったりへばり付いて隠れている白魔。
「……何やってんだ」
「あ、戦士ぃ、Help me!」
 とりあえず泣きわめくシーフを摘み上げた。
「なあーに泣いてんだ」
 しかしシーフは涙でぐちゃぐちゃの顔を真っ赤にしながら、戦士には関係まいと抵抗する。
「っひぐ、あぐっ」
 仕方なく放してやると、その場でうずくまってしまった。
「どうしたんだよコイツ」
「それが……」
 戦士が尋ねるとモンクは溜息をつきながら、事情を説明した。
「はああ? リボン?」
 戦士は理由を聞いて呆れた。
 シーフは昨日戦士が白魔に買ってあげたリボンを自分も欲しいと駄々をこねたのだ。
「お前はモンクにバンダナ買ってもらっただろう」
 そうシーフに言うも、バンダナは嫌だと言わんばかりに投げ捨ててあった。それを拾い上げ、シーフに言った。
「要らないなら、俺がもらうからな」
 ビクッとシーフの体が揺れた。
 結局シーフの手元には何も残らない。それにまた泣き出した。とうとう折れたモンクは白魔にリボンを譲るよう言った。
「また新しいの買ってやるから、な」
 白魔は渋々とリボンを差し出した。
「偉いな、白魔は」
 リボンを受け取った戦士が白魔を褒めると、またシーフの体が揺れた。
 そしてモンクが白魔を連れてリボンを買いに出て行った。
 戦士はシーフにリボンをやった。だが、泣き止んだものの、シーフの顔は冴えない。
「お前もリボンが欲しいなら、初めから言わないと」
 すると、閉ざしていた口を開いた。
「……だって、せんしにかってもらったの、ずるいもん」
「?」
 何の事だかよく分からないでいると、シーフがまた泣き出した。
「だからお前はモンクに……あ」
 シーフはリボンが欲しかった訳ではなく、自分に買ってもらいたかったのだと理解した。
 実にくだらない嫉妬。それでも、
「ったく」
 こんなシーフが愛おしいと思ってしまう自分が1番……。
「馬鹿みてえじゃんか」



※ナニコレどうしてくれよう…


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