2010/11/09
ボツ(2
腹部からの鮮血がまるで他人事のように思えた。鼻についたその血の臭いが朦朧としていた意識を僅かに止まらせていた。
大丈夫だ。
そう何処かで過信していた自分が恥ずかしい。血みどろの己を罵った。
頼りに頼った義兄の背中。最後までその大きくて広い背中を見ていた。
圧倒的な強さの象徴だった。剣の稽古でも一度も勝った事がない。
油断して兵士に切り付けられた。結局義兄の足を引っ張ってしまった。
何も出来ずに力に呑まれるしかない。
(オレは……無力だ……)
強く、
強くなりたい……。
薄れ行く意識の中、強く思った。
絶対的な存在であった。あの義兄がそう簡単にやられる訳がない。生きている筈だと願った。だがこの不安を拭い切れない。知っていた。義兄も強さに対しては貪欲に求めていた。だからあんなにも強かった。
寝返っていたら。
※某企画様用として書いてましたが……ちょっと、ね