2010/05/05
虚ろな愛(総→古

 初めて、人を愛しいと思った。震える感情に締め付けられるほど苦しい。だが、想いは伝えられないおろか、会えもしない。何故ならば、お互い争う敵同士であり、相手にしてみれば憎い仇でしかないからだ。
 静かに想いを馳せる。伝わらない虚しさを背負いながら。

 ヤマトで出会った坊や。古代進と言った。艦長代理だと言っていたが、年端のいかない子供が艦長代理など、片腹痛かった。
 そのヤマトに討ち滅ぼされてしまったデスラーだったが、彗星帝国の者に助けられ、命を取り留めた。それからはヤマトに対する復讐心で頭が一杯だった。戦いに初めて負けた屈辱。
 当然怨みの対象になるはずだった。だが、古代だけにはそういった感情がまったく起こらなかった。むしろ、関心してしまっていた。
 彗星帝国での暮らしは肩身の狭い思いをしていた。その目はガミラスの総統としてではなく、ヤマトに破れた男として見ている。蔑むような笑いに、腹の底から怒りが湧き出る。
 寧ろヤマトの事よりこちらの方が堪え難く、その怒りをヤマトと戦う事で晴らしたいと思うようになっていた。
 古代なら、受け止めてくれるような気がしていた。あの真っすぐな正義は本物だからこそ、解ってくれると思った。そう思うと、会いたくてたまらない。その顔を見たい。デスラーの中で古代の存在が大きくなっていた。
「……私は」
 頭がおかしくなったのか?
 気が付けば坊やを、古代の事を考えている。
 そんな事態に戸惑いを覚えた。この想いは、危険分子を孕んでいる予感はしていた。気付いてはならなかったのだ。
 坊やに、惹かれている……。
 認めたくない絶望。だが同時に歓喜にも似ていた。
 こんな気持ちは初めてだった。芽生える愛情。ガミラスにいた頃には1番邪魔な感情であった。甘えでは力を示せない。非情でいなければ絶対的な力を保てなかった。
 どうすれば、どう扱えばいいのかも分からない。誰に相談出来る訳でもなく、内に秘めたままは辛かった。腹心のタランになら、と一度思ったが、自分の仕えている人間が今まででは考えられない、有り得ないと幻滅されては元もこもない。
 このままではヤマトと戦えそうな気がしない。押し殺さなければ、屈辱を晴らせないのに。
(坊や相手に……)
 私は、参っている。
(古代)
 いつか会えたのなら、
 赦されるなら、
 抱きしめたい。
(お前を、)
 愛している──。


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