2011/05/24
雨(1戦シ
雨は嫌いだ。
惨めだった頃の自分を思い出す。
シトシト雨が降る。宿屋の一室でシーフは窓から空を睨むように見ていた。晴れがいつでも嫌な記憶を掻き消してくれる。でも、太陽は厚い雲に閉ざされたまま。
聞かせておくれよ。
誰に言われた訳でもなく、呟く。
「盗みにヘマしたのさ。高を括って金持ちの屋敷に忍び込んだ」
貧しさが仇となった。
誰が悪い訳ではない。運命を呪った、声が枯れるまで泣き叫んだ。しかし耳を傾ける者はいない。
「捕まって、殺されかけたけど死ぬ気で逃げ出した」
「それで?」
シーフは傍らで寝ていたはずの戦士を見た。やはり起きていた。
「……それでも生きた」
生きて生きて、君に出会った。
難しい顔をしていたシーフに、戦士は手を伸ばし頬に触れた。
「雨は、いつか必ず止んで、晴れるもんさ」
そうやって生きて来たなら、尚更。
「でも、また降る」
「俺が雨宿りさせてやるよ」
「ああ……」
ゆっくり前のめりにシーフは、戦士の唇に温もりを求めた。
※シーフを全力で愛するのが戦士の使命だろ!と声を大にして言う