春である。誰がなんと言おうと、このぽかぽか陽気は春である。
窓を開け、春の暖かな日差しと風を受けながら、家主の少女はソファでころんと丸まってうたた寝をしていた。
そこに幸村と慶次と元親、タオルケットを手にした風魔が通りかかる。
4人は静かに寝息をたてる彼女の様子を見て、無意識のうちに綻んだ。
「寝ておるのか…」
「なんともまぁ幸せそうに寝てやがる」
「今日は絶好の昼寝日和だからなぁ」
風魔はそっと、起こさないように薄手のタオルケットを幸せそうに眠る少女にかけてやった。
すると、彼女はむにゃむにゃと口を動かして微笑む。
「んぅ…」
起こしてしまったか、と思い4人は思わず呼吸を止める。
しかしまだ寝ているとわかると、ふぅ、と一つ、幸せそうな溜息をついた。
「それにしても、寝てんのもまた可愛いねぇ」
「なっ…ひ、否定はせぬが…」
「なんだろ、俺は確かに好きなんだけどさ…なんだか、妹みたいにも思えちまう」
「はっ、まだいいぜ。俺なんざ娘みてぇに思っちまった」
「うわっ、元親年取ったなぁ」
「るせぇ」
「長曾我部殿には、娘がいらっしゃるのか?」
「違ぇよ。もし娘がいるんなら、こんなだと思っただけだ」
「…(コクン)」
「お、アンタも、娘って思っちまったのか?」
「…」
「否定はしない、ね」
「そ、某は…こ、このような妹がいたら、と」
「何がだ」
「An?青空は寝てるのか」
「あーらま、折角おやつも買ってきたのに」
綺麗に半々に娘派と妹派に分かれたところで、買い物から帰ってきた小十郎、政宗、佐助が加わる。
慶次は早速その3人にも説明をすると、佐助は迷うことなく答えた。
「そりゃぁ、この寝姿見たら、娘って感じかな」
「アンタはどうだい、右目の兄さん」
「…どちらかというと、妹だ」
「ほぉ、意外だな。アンタ等二人の意見は逆になると思ってたぜ」
そう思ったのは元親だけではなかったということだけ、ここに特筆しておく。
「政宗殿はどうでござるか」
最後に幸村が、ただじっと愛くるしい寝姿を見つめている好敵手に尋ねた。
が、彼はまるで呆れたように溜息を吐き出した。
「俺はどっちも却下だ」
「えっ、それってもしかして、姉…」
「No.それも違う」
「…もしかして竜の旦那、母親とか「はったおすぞ」
じゃぁなんだ。と政宗以外の全員が顔を見合わせたとき、当の本人はにやりと、不敵な笑みを浮かべた。
「娘だろうが妹だろうが、そんな関係じゃぁコイツはオレの女にならねぇ。
つーことで、オレの選択肢は『My honey』だ」
「…つまり、アンタの奥さん、ってことかい?」
「Of course」
まるで勝ち誇ったような笑みを浮かべる政宗に対し、めらめらと対抗心を燃やすのは、戦国武将であるからか
はたまた、ただの男であるからか。
とにもかくにも、この愛されている眠り姫は
(どうしよう…起きるタイミング見失っちゃった…!)
と、一人悩んでいるのであった。