今年もやってきました、4月1日。
去年は失敗に終わってしまいましたが…うう、思い出しただけでも悪寒が。
今年は、もっとありきたりで大きな嘘をつくのです!!

「なぁ、今日は確か『えいぷりぃるふぅる』だよな!」
「去年はテメェのわかりやすい嘘で、最終的には俺らが得したからなぁ」

…あ、もうばれてます。
まさか、彼等がエイプリールフールを覚えているなんて…誤算です!

「今年はどんなjokeを見せてくれるか、楽しみだなぁ?」
「ま、頑張れよ」

むー!完全に馬鹿にされてます!

「ぜ、絶対に皆さんがビックリするくらいの嘘ついちゃうんですから!」

嘘をつく、ということを予告宣言しちゃった今朝。

「…どうしよう、結局全然思いつかないや」

学校にいる間も考えたけれど、なかなかいいのが思いつかずに下校中。
今日は早く帰ることもあって、また、帰ってからの私のおそらく小さな嘘を楽しみにするということもあって、いつもはいる誰かのお迎えがありません。
…さて、困りました。

「うーん、宣言しちゃったしなぁ」

キコキコと公園のブランコに座り軽く揺れながら、何か皆がビックリするのはないかと頭をひねらせる。
思いつくも、きっと誰かしら気付くであろうものばかり。
うーんと唸っていると、何やら楽しげな声がたくさん聞こえてきた。
鞄を抱えながら考える私の前を、小学生の集団下校の軍団が通る。
ああそうか、最近は物騒だから皆で帰ろうってことになってるんだよね。
本当物騒な世の中だよね、怖い人に襲われたら大変だもん。

「…ん?大変なこと…そうだ!」

思いついたあまり勢いよく立ち上がった私に、小学生がいっせいに振り返った。
私は携帯電話を取り出し、家にかける。
4コールあってから、カチャリと音がして、声も聞こえた。

『はい、どちら様ですか?』

このしっかりとした対応は小十郎さんですね。

「小十郎、さん…?」

彼の名を呼ぶ私の声を震わせる。

『青空か、どうした』

私のいつもとは違う様子に、電話の向こうの小十郎さんの様子が変わったと思う。
同時に、小十郎さんが『お前か』と言ったら、後ろで私の名前を呼ぶ声がちらほら聞こえる。
ちょうどいいです、なんなら、皆さんに聞こえるようにやっちゃいましょう!
少しだけ多めに、息を吸った。

「助けてください!」

私はそれだけを叫んだ。
叫ばれたむこうはやけに静かになった。これは…失敗、かな?
そうだよね、こんな見え見えでしかも朝に嘘つくって宣言しちゃったし、騙されないよね。
続く沈黙を破ろうと、私は自分からおどけてみることにした。

「な、なんちゃっ『待ってろ!今からむかうからな!!』

えっ…この反応、ま、まさか、本当に騙されて…?

『今どこにいる!?』
「え、あ、えと、公園…」
『貸せ小十郎!…おい!大丈夫か!?』
「だ、大丈夫ですけど…あの『今から行く!それまで耐えてろ!』

―プツッ―

私がネタバレをする間もなく、彼らの勢いに押されたまま電話は切れてしまった。
…どどど、どうしよう!
予想外の展開に、仕掛け人である私の方が慌てふためく。
だって、まさか本気で「助けて!」という叫びを受けとるなんて…。

「…ネタバレして、謝るしかないよね」

う、うん。きっと、もうなんだよ〜的なノリで笑ってくれるはず!
だってエイプリールフールだもん!

「大丈夫か!!」

聞きなれた声が聞こえた。
反射的に振り返ると、そこには息を荒げながらこちらにむかって走ってくる7人の姿が。
しかもその手には武器。木刀とかじゃなく彼等がむこうの世界で日頃から愛用している武器。つまり本物。
冷や汗がまた1つ零れ落ちた。

「怪我はねぇか!」

私の肩を掴む政宗さんの形相はとても雄渾であった。

「誰だ!襲ってきたのは!?どこにいやがる!」

続いて、憤怒を瞳に宿す元親さんが叫ぶ。

「……あ、の…」

なかなか口を開けずにいたが、私は拳を握って、勇気を出した。

「…嘘、なんです」

私の告白に、彼等は揃って目を丸くした。
ああ、やっぱり本当に騙されていたいたんだと改めて思い、笑顔が引きつる。

「「「馬鹿野朗!!!」」」

その笑顔も、彼等の大声によって一瞬で剥がれた。
近くの木々から鳥達が飛び立ち、羽をばたつかせていなくなる。
鳥の声も遠ざかった頃、政宗さんの私の肩を掴む手に力がこもる
これでもかってほど眉間にしわをよせ、私を見る目は、思わず足が震えてしまうほど怒りに満ちている。

「こんなjokeをつくやつがあるか!」

他の人達の目も、同じようなことを語っているようだった。

「ご、めんな…さい…」

声が震え、目頭が熱くなり、視界がぼやける。
目の前にいるはずの彼らの怒る表情すら見えなくなってきた。
しかし、確かにそこには彼がいた。

「…馬鹿野朗、オレ等がどれだけ心配したと思ってやがる…」

小刻みに震える私を、包み込むように、それでも力強く抱きしめる。
そこには、横溢する優しさと想いがあった。

「本当、心配したんだからな」
「佐助さん…ごめんなさい」
「いくら嘘をついていい日だからってさ、俺達の寿命を縮めるような嘘はもうしないでくれよな!」
「はい…ごめんなさい、慶次さん」

本当に、ごめんなさい。
私が逆の立場だったら、死ぬほど心配するよ。
ここまで怒ってくれるってことは、本当に心配してくれたんだよね。
心配かけて、ごめんなさい。
でも、心配してくれてありがとう。

「…そろそろ帰るか」

体を私から離し、政宗さんは私の手を引いた。

「今日テメェは晩飯抜きだな」
「ええ!?」
「冗談だ」
「だが、お前の好きな菓子は没収な」
「そんな…!」
「冗談だっての」
「…すまぬ!青空のその好きな菓子、某が食べてしまいもうした!」
「…冗談、だよね?」
「旦那に嘘はつけないぜ」
「…はい」




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