英語を覚える目的で始まった勉学勝負は

「Fight!」
「負けぬぅぅううう!!」
「っ…」

腕力勝負の腕相撲となってしまいました。
うーん、英語を覚えるという当初の目的は微塵も感じられませんね。

「おっ、いい勝負だなぁ」
「お互い譲れないんでしょ」
「某!政宗殿と対峙するまで負けられぬ!うぉおお!!」
「!!」

―ダァンッ―
―めきょっ―

卓上での激しいバトルが終わった。

「な、なんか最後に凄い音しましたけど…」
「ああ、風魔の右手首の関節が外れた音だ」

私の隣に座る、先ほどの英語の勝者の小十郎さんが説明してくれました。

「…え、関節?」
「うぉおお!やりましたぞお館様ぁぁあああ!!」
「……」

小太郎君の右手首はぷらぷらして、変な方向に曲がって…!?

「…!!……!」
「声になってねぇぞ」

わなわなと震える手を、そっと小太郎君の右手に添える。

「だだ、大丈夫!?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、忍は関節も自分で外したり戻したりできるから」

にょいっと小太郎君の背後から出てきた佐助さんが、自分の手をゴキリと鳴らした。

「ひぃ!?」
「猿飛、気味の悪ぃもんをコイツに見せるな。風魔、テメェも戻せ。それ」
「了解っと」

2人は一斉に手首を捻る。さっきまでいかにもおかしかった手首は、見慣れた形へと戻っていた。
凄いです忍者。人体の不思議忍者。

「そんじゃ、お手柔らかに頼むぜ」
「Ha!coolにいこうぜ」

関節の話題で盛り上がっているうちに、第2ラウンドが開始された。

「ふぁいっ!」
「おりゃぁ!」
「っ!」

まだ涼しい顔の慶次さんに比べて、政宗さんの眉間に若干しわが寄る。

「ま、力の差は歴然だな」
「こりゃぁ勝負アリか?」
「ぬぅ…政宗殿!奮えよ!」

誰もが慶次さんの勝利を確信した中

「…いや、政宗様はそんな簡単に負けるお方じゃねぇ」

竜の右目、小十郎さんだけは諦めていなかった。

「アンタの力、こんなもんかぃ?」
「………」

政宗さんは何も言わず、ニヤリと笑った。
すると、彼は首を横に捻り、私を見たかと思うと左手で指を指してきた。

「青空の下着見えてるぜ」
「えっ、まじ!?」
「嘘ッ!?」

政宗さんの一言に、私は急いでスカートを押さえ、慶次さんの輝く目に入らないようにする。

―ダンッ―

直後、テーブルに叩きつけられた音がした。

「えっ…?」

下になっているのは、さっきまで有利だった慶次さんの手。

「Sorry,fakeだ」

騙し討ち。まさか腕相撲で騙し討ち。

「え?もしかして、見えたって嘘?」
「Yes」

フンと鼻を鳴らし、余裕の表情。
一方の慶次さんは、現状がわかったあと、1人隅っこで膝を抱え始めました…。

「騙し討ちたぁいけすかねぇぜ」
「騙し討ちも何も、ruleにのっとってやってんだ」
「政宗殿!正々堂々と勝負なされよ!」
「次からな」
「絶対次も何か仕掛けてくる気だ…」

次から、明日から、などの類の言葉はやらないも同然だと聞いたことがあります。
そんなで、第3ラウンドは…。

「鬼の相手が猿たぁ…」
「さて、鬼退治の始まりっと」
「おお、うまい!」
「どこがだ」

しょんぼり。

「Ready go!」

政宗さんの掛け声で、2人の腕に一気に力が入る。
2人とも必死な顔です…凄い迫力。

「2人とも、頑張ってくださ〜い!」
「おぅよ!」
「任せといてー」

元気に返事をしてくれるも、気迫はお互い負けないくらい強いです。

「お猿さんよぉ、そろそろ限界じゃねぇのかぁ?」
「全っ然。鬼の旦那も、額に汗滲んでるけど?」
「ぬかせ。そろそろケリつけてやる」
「悪いけど、桃太郎を護るのが猿の役目なんでねっ!」

佐助さんは空いた左手を口元に持っていき、何かを唱えた。

「なっ…!」

それを間近で聞いた元親さんは、操り糸が切れた人形のように体が崩れ落ちる。

「元親さん!」
「大丈夫、眠ってるだけ。ま、暫く起きないけどね。」

盛大な寝息をたてて、元親さんは眠っている。

「ということでぇ、勝者は俺様「NO.アンタは反則負けだ」

意気揚々と胸を張る佐助さんに、腕組をした政宗さんが冷静に教えた。

「忍術は反則だ」
「そんなこと言われても、事前に教えられてなかったしー」
「今決めた」

どーんと言い張る政宗さんに、さすがに佐助さんも目が点でした。

「佐助!正々堂々の力勝負に、忍術を使うなど規則に反するということくらいわかるであろう!」

ここで、主君の幸村君も強気に出てきました。

「そー言われてもねぇ…」

ぽりぽりと頭をかき、ねぇ?と、私に目を配らせた。

「…え?ねぇって言われても…」

確かに反則かもしれないけど、忍術も作戦ですし…。

「ってか、さっきあんなことした政宗さんに言われても説得力ありませんよね」
「あれは作戦だ。術なんぜ使ってねぇぜ」

まぁそうですけれども。

「とりあえず、アンタは失格だ。忍術使ったpenaltyだ。小十郎」
「はっ」

小十郎さんの手には、深緑色の液体の入ったコップ。

「…まさか、それ飲めって?」
「そうだ」

佐助さんの冷や汗をよそに、小十郎さんはさらりと答えた。

「見た目によらずdeliciousだ」
「う、うーん…」

暫くその新緑の中を覗いていた佐助さんは、ゴクリと喉を鳴らし、意を決した。
コップをいっきにあおる!

「…だったらいいな」
「願望!?」

美味しいんじゃないんですか?!ただの政宗さんの願望ですか!?
私がつっこんだ直後、背後で、誰かが倒れた…。

「えーっ、本来は佐助さんか元親さんがシードの小十郎さんと戦う予定でしたが、2人とも戦闘不能ですので、小十郎さんは直接決勝ということになります」

業務連絡を済ますと、早速準決勝の2人が肘をついて睨み合っていた。

「ここでアンタと戦うとは…Arm wrestlingとはいえ、全力でいかせてもらうぜ」
「某とて、この戦いでも貴殿に負けるわけにはいかぬ!」

蒼紅好敵手の戦いが、こんなところでも見れるなんて…!

「何故でしょう、私、興奮してきました!2人とも、頑張ってー!」
「どうした(つーかコイツ、自分が賭けられていること忘れてねぇか?)」

なんだろうこの不思議なテンション!
自分でもわからないけど、わくわくしてます!

「青空、ちっと待ってろよ。すぐお前を掻っ攫ってやるからよ」
「そのようなこと、某がさせぬ!そなたに渡せばどんな破廉恥な仕打ちを受けるやも知れぬのに…」
「ふぁいっ!」
「今?!」

語っている最中に慶次さんの開戦の合図。慌てて2人は試合開始。
その力はやはり互角で、片方に少し倒れてはまたもとの位置に戻るの繰り返し。
2人の白熱した試合が、場の空気を熱くする。

「ううっ…頑張って、2人とも!」

いてもたってもいられず、私は立ち上がり応援し始めた。
横で、小十郎さんが小さく溜息をついたことも知らずに。

(やっぱり忘れてるな…)
「ほらほらお2人さん、惚れた女の声援があるんだから、かっこ悪いとこ見せらんないよぉ?」
「I see…!」
「言われずとも…!」

真剣勝負はどっちつかずで、これは暫く平行線を辿りそうです。

「んが〜…」

ふと、寝息をたてる元親さんが私の後ろで寝返りをうった。
そしたら大きな体が私の足にちょうど、膝かっくんのようにぶつかる!

「うひゃぃ!?」
「!?」
「青空!」

突然のかっくんによりバランスを崩した私は、ふらりと体が傾く。
転ぶと思った直後、隣にいた小十郎さんが私の腕を引っ張り、自然と彼の膝に落ちた。

「っと、たく、熱くなるのはいいが、周りに注意を払え」
「あぅ、すいま…」

ぱっと顔を上げたら、予想以上に近い小十郎さんの顔。

「わっ…」
「?」

顔が火照り、このままじゃばれてしまうと思って、私はとっさに話題をふった。

「そ、そういえば試合は…」
「見えっ…!」

見え?はっ、勝負の境目が見えたってことですか?!
どっちが勝ったのか確かめるために振り返ったら、3人は私を、というよりも、私のお尻を凝視していたのです。
小太郎君は何故か、こちらに背を向けています。
私は何かと思い自分の後ろを確かめると
なんと、スカートが盛大に捲れあがっていたのでした…って

「きゃぁああ!!」

即座に体勢を戻り、スカートを直して後退りをする。
どど、どうしよう、見られちゃった…!!
しかも思いっきり!わー!なんで誰も教えてくれなかったの?!
羞恥と焦りでパニックの私を他所に

「いやぁ…いいもん見れたよ!」
「pinkのlaceがつい「言わないでください!」
「………」

茶化してくる政宗さん達に対し、幸村君はぴくりとも動かない。

「ゆ、幸村君?」

慶次さんが目の前でおーいと声をかけるも、反応せず。

「大方突然のことで、刺激が強すぎたんだろ」
「えっ!?な、なんかごめんね幸村君!」
「お前は謝らなくていいだろ」
「丸見えだったしな」

ひぃ!丸見えですと?!

「…!」

丸見え、という言葉に反応したのか違うのか、幸村君の肩が軽く動いた。
そして首をぎこちなく動かし、正面の政宗さんを見る。
その顔は真っ赤もいいところで、ぱくぱくと口を動かし何か言いたげです。

「…おい、どうし「破ぁ廉恥ぃぃいいい!!!」ごぶっ…!!」

お約束、破廉恥!と叫びながら、幸村君の開いていた左手が拳となり政宗さんを殴り飛ばす!

「政宗様!」
「政宗さん!」
「Oh…pinkのれーs「なんでそこで出てくるんですか!」

私の下着の特徴を口にしたあと、政宗さんはくたっと動かなくなってしまった。

「破廉恥ぃいい!破廉恥ぃい!!」

一方殴ってしまった幸村君は、破廉恥と連呼しながらゴロゴロゴロゴロ…。

「ゆ、幸村君、大丈夫?」
「んー、今行くのは間違いなんじゃ…」

転がる幸村君の肩を軽く叩くと、幸村君は転がるのを止め私を見た。

「…ぶふぉ!」
「きゃぁ?!」

すると突然、幸村君が鼻血を噴出して倒れた!

「ゆゆ、幸村君!しっかりしてー!」
「お前が近づく限りしっかりできねぇと思うぞ」
「っていうか、結局優勝は…右目の兄さん?」

幸村君と政宗さんの介抱をする中、慶次さんは気がついたように言った。
それによって今まで何の為に腕相撲大会が開催されていたか、やっと思い出す。
そうでした、私、優勝商品にさせられてたんだった。

「そう、なるのか…?」
「なるだろ?この2人も戦闘不能だし、アンタと戦う相手はもういないわけだし」
「……」
「よく考えたら、小十郎さん1回も戦う機会が巡ってきませんでしたね」

それで優勝もある意味凄いです。

「ちぇー。どっちにしろ、右目の兄さんが独占権得るのかぃ」

ぶーと頬を膨らます慶次さんは、ごろんと横になった。

「俺もあの時騙されてなかったら勝ってたのにさー」
「色気に取られるお前が悪い」

きっぱりと言いのける小十郎さんに慶次さんは何も返せず

「うっ…お、俺も疲れたから昼寝!」

横を向いてお昼寝体勢に入ってしまう。

「あらら、慶次さんまで…」

部屋では眠っている(意識ない)人がごろごろと。
さすがにこのままだと風邪引いちゃうよね。

「私、掛け布団持ってきますね」

そのため立ち上がろうとしたとき

「待て」

背後から抱きすくめられ、すとんと小十郎さんの膝の上に落ちた。

「お前はこれから俺が独占するんだからなぁ?勝手な行動すんなよ」

意地悪な笑みを浮かべ耳元で囁かれ、ぴくんと体が跳ねてしまう。
ど、どうしよう、今の小十郎さんは、政宗さんと同じくらい色気が漂っています…!
でも違うのは、小十郎さんは大人の色気で…。
まだ子供の私には、刺激が強いです…。

「だ、駄目、小十郎さん…」

恥ずかしすぎて、私も倒れちゃう…!
必死に耐えていたら、小十郎さんとは反対の方向から引っ張られる。

「………」
「小太郎君…」

生き残りの1人、小太郎君だった。

「おい風魔、コイツは今日1日俺が預かる。お前も寝ていたらどうだ?」
「…(主、嫌がっている)」
「こ、小太郎君っ」

睨み合う2人の間に入り、小太郎君を止める。

「ルール…約束は約束だから、ね?」
「……」
「それに、私は大丈夫だから(たぶん)」

小太郎君は暫く考えた後、私をそっと離し、小十郎さんを一睨みして風とともに去った。
…大丈夫なんて言っちゃったけれど

「ふっ、利口だな、お前は。たっぷり可愛がってやる」

スイッチONの小十郎さん。なんて開放的な小十郎さん。
一番安全だと思っていたのに、それは裏を返せば一番危険な方ってことなのですね。
…もう私を独占する権利とか、禁止です!




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