7月7日、私は学校から帰ってきた。

「あれ?小太郎君、その笹どうしたの?」
「………」
「もしかして、山から採ってきたとか?」
「……」
「俺が頼んだんだよ!あんがとな」

小太郎君が慶次さんの言うこと聞くなんて…珍しいなぁ。

「ほら、今日は七夕だろ?だから、短冊でもかけようかと思ってさ」

そっか…だから笹を。

「他の奴らはもう短冊に書いてるぜ!青空も早く書けよっ」
「はいっ」

とたとたとリビングへ急ぎ足で入れば、そこでは既に皆さん短冊を書き上げていた。

「お帰りー」
「おおっ!青空も早く書くのだ!」

幸村君がピンク色の短冊を私に差し出す。

「帰ってきたか、調度いい、これから飯を作る」
「了解っと。早く書いて早くきてくれよぉ」

どうやら今日はそうめんのようです。

「これでいいか?」
「いいんじゃない?じゃぁ俺らはこれでいいな!」
「OKだぜ」

皆さんかけ終わったらしく、色とりどりの短冊が吊るしてある笹を眺める。

「旦那たちも、手伝ってくれよ!」
「今行くぞ!」
「しゃぁねぇなぁ」

ぞろぞろと、笹をかけたベランダから出て行く。
笹を見上げると同時に、満天の星空がバックに見えた。

「…綺麗、これなら、織姫様と彦星様も会えるよね」

運命の人と離れ離れなんて、可哀想だよね…。
少し冷たい風が吹き、短冊を揺らす。
外には私1人と、飾られた笹が1本。
…皆さん、なんて書いたんでしょうか。
だ、誰も見てないよね?
私は1つの短冊に手を伸ばした。
青い短冊。達筆だけども、なんとか読める。

『天下統一!Yeah-!』
「…ふふっ、政宗さんらしいな」

破廉恥で結構いい加減に見えるけど、根はやっぱり一国のお殿様。
是非とも、叶ってほしいな。
その隣には、赤い短冊

『お館様ご上洛!』
「やっぱり、幸村君だね…」

お館様1番だもんね。
その下には、緑の短冊

『旦那がもうちょっと給料上げてくれますように。』
「あはは…佐助さんらしいや」

でも、上の2人がビシッと決めてただけあって、佐助さんのお願いごとが1番親近感沸きます。
その隣、政宗さんの短冊の下にある、茶色の短冊。

『政宗様が無茶をしない。』
「小十郎さん…やっぱり、小十郎さんはかっこいいなぁ」

義を通して、政宗さんが心から大切で、護って…政宗さんは、幸せ者だね。
その斜め上に、黄色い短冊。

『恋ができる世の中になりますよーに!』
「慶次さんだ…恋ができる世の中、か」

きっと、平和な世になるんだろうなぁ。

その横で揺れる、紫の短冊。

『借金返済。』
「…リアルすぎる」

なんだっけ?あのおっきな兵器…頑張れ元親さん!
そして、片隅にこっそりあった灰色の短冊。

『給料上げて。』
「これ、小太郎君、だよね…?」

しかも給料上げてって、佐助さんと同じような…って、誰に言っているの!?

そのとき、はた、と、気がついたことがあった。
彼等の願いは全て、彼等がもといた世界での願い。
…やっぱり、そうだよね。
夜風が冷たい。
心臓が握られるような、泣きたくなるような気分。

「私、何考えてるんだろう…」

そうだよ、これが彼等の本来の願いなんだから。
私が関与するところなんて、ないのだから。
私はピンク色の短冊に、手早く願いを綴り、1番高いところにひっかけた。
1つ、落ち着いた溜息をはき、目を逸らすようにベランダから出た。

「おい、飯足りるか?」
「今朝炊いたんで大丈夫だと思いますよ!」
「あっ、旦那!つまみ食いしちゃ駄目でしょーが!」
「むぐっ…」
「今日は外でたくさん体動かしたから、腹減ってんだよ!」

『皆さんの願いが叶いますように』

今度は、生ぬるい風が吹く。
笹が揺れたとき、埋もれていたもう1枚の短冊が姿を現した。

『もっと、一緒にいられますように。』

そこに名前はなかった。
個人の願いか、それとも全員の願いか…。
それを知るのは、空で輝き続ける2人の恋人のみ。





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