「Honey!I love you!」
「ひゃぁ!?いっ、いきなり抱きつかないでくださいっ」
「政宗様!何をなされておられるのですか!」
「見りゃわかるだろ、愛情表現だ」

政宗さんの愛情表現は結構過激です。

「前に一度そうやって、怪我をさせるところでしたでしょう!」

はい、それは遡ること2週間くらい前。

お料理をしていた最中に何を思ったのか抱きついて(というか飛びついて)きて危うく手を切るところでした。
そりゃもうザックリといくところでした。

「あんときのオレは確かに軽率だった。けど今はなんもしてねぇから、問題ねぇだろぉが」

あのあとめたんこ小十郎さんにお説教され、本当に反省したはずだった彼。
まぁ、今は何もしてなかったし…正論と言えば正論ですが。

「ですが…!」
「小十郎さん、政宗さんもまだ甘えたいお年頃なんですよ」
「おい、年下にガキ扱いされたくはねぇ」

体をがっちりと動けないくらいに抱きしめられる。
色っぽい政宗さんの顔が近くって、思わず目を逸らす。

「こっ、小十郎さ〜ん」
「…はぁ」

うっ、溜息…。

「政宗様」

小十郎さんの呼び声に、政宗さんは素直に顔を上げる。

「政宗様は以前、青空がこの小十郎の娘に見えるとおっしゃいましたな」
「そういやぁ、んなこともあったな」
「ならば、父親の前で娘とそのようなことをしてよろしいのですか?」
「お、おい、小十郎…笑いが黒いぜ?」

わ、笑ってはいますが…変な威圧感出てます!
政宗さんがそんな小十郎さんに警戒していたら、ふいに私の体が政宗さんとは逆に引っ張られる。
そう、お父さん、じゃなくて小十郎さんの方に。
胡坐をかく彼の膝の上に乗せられ、本当に子供のような扱い。
いや、それは結構毎日なんですけど。
頭を彼の大きな肩に押し当てられ、ほぼ小十郎さんしか瞳に映らない。

「小十郎…」
「よいですか政宗様、年頃の娘にそのような行為を毎日のようにしてはなりませぬ」
「小言はいらねぇよ」
「もう少し自重なさいませ!」

やっぱり、小十郎さんには何も言えないんですね。

「小十郎、それは誰の意見だ?」

かと思うと、彼はいつものように口を開いた。

「小十郎のものでございます」
「テメェの意見じゃなく、コイツの意見を聞こうぜ?」

そう言って、顎で私を指す。
ばっちりと目が合ったかと思うと、彼の手が小十郎さんの手を払いのけ、私の顎を持ち上げる。
顔の位置が、まさに目と鼻の先にある。

「Honey,オレに抱きしめられんのは、嫌か?」

まるで、キスをしてくるような目。
政宗さんに抱きしめられるのは、というか全体的に男性に抱きしめられるのは、正直普通に恥ずかしい。
アメリカじゃぁ挨拶=ハグだった。でも私は日本人。恥ずかしいっちゃぁ恥ずかしい。
でも、それが嫌だなんて思ったこともなかった。
なんでだろう…。
今もこうして、小十郎さんに抱き寄せられている。
政宗さんに、接近されている。
恥ずかしいけど、嫌だって思わない。

「えっと…嫌では、ないと思います。でも、恥ずかしいです…」
「だろ?オレの愛情表現が嫌なわけねぇ」

そっか…!愛情表現!

挨拶でもなんでも、ハグには『愛』がある。
敬愛、親愛、愛情…そっかぁ、そういうことかぁ。
1人で納得した私は、いてもたってもいられず行動に出た。

「政宗さん!」
「An?」

小十郎さんから跳び抜け、すぐ目の前にいる政宗さんの胸に体をくっつけた。

「Honey!?」

突然の私からのハグ。それにあの政宗さんが驚いた様子を見せた。

「小十郎さん!」

すぐに、政宗さんから小十郎さんへダイブ。

「お、おいっ…」

きっと2人は私の行動が意味不明でしょう。
それでもいいか。バレて政宗さんが調子に乗るよりは。

「敬愛の意。愛情表現が嫌な訳ないんですよね?」
「…敬愛の意、か」
「流石はオレの青空だ。うまいこと言いやがるぜ」

貴方のじゃありません。と、言おうとしたときだった。
頬に、柔らかいものを感じたのは。
それが政宗さんの唇だと気がつくのは、そう遅くはなかった。

「だが、オレは男として女へのloveだ」

覗き込むように注がれる熱く鋭い視線。
何も言えず、ただ顔を紅くする私を

「政宗様っ」

大きな腕が引き寄せた。すっぽりと収まってしまう私の体。

「どうした小十郎」
「どうしたもなにも、はしたないですぞ!」
「本当にその理由か?」
「っ…!」

政宗さんの言っていることが、まるで小十郎さんが嘘をついていることを見破るような言葉。

「いいぜ小十郎。テメェの心の想うように動け」
「ですがっ…」
「オレのこたぁ気にすんな。いいrivalじゃねぇか。小十郎」
「政宗様…」

ライバル?政宗さんと小十郎さんが?何で?

「オイ、コイツ何にもわかってねぇようなツラしてんぞ」
「…分からない方がよろしいのではないでしょうか」

えっ、私!?
戸惑う私の前に、ズイッと近づく政宗さん。
背には小十郎さん。伊達主従によって軽くサンドイッチ状態の私。
そのとき、私の体に回す小十郎さんの腕に、さらに力が入った気がした。

「これからも覚悟しろよ?お姫様」
「っ…!わ、私そんなんじゃ…!」
「否定すんな、事実そうなんだよ。テメェはな…本当に愛されるお姫さんだこった」

両頬に、柔らかい感触。
それが以外に長くって、その間その正体に気付いてしまって思考回路が停止したのは、言うまでもないです。





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