「相変わらずいい飲みっぷりだねぇ元親!」
「海の男、なめてもらっちゃぁ困るぜ?」

週一のお酒解禁日。それはそれはいろんな意味で修羅場と化します。
どうやらむこうの世界ではお酒を毎日のように飲んでいたらしい元親さんと慶次さんは、必ずに近いくらい飲み勝負をなさいます。
勿論それは今日も同じことでして。

「酒に強い男はいい男!ってね」
「そうかよ」

未成年にはなるべく飲ませないようにしているんですが、飲んじゃう政宗さんと幸村君。はもう夢の中。
そして、飲むけどめちゃくちゃ弱い風魔君も既に夢の中。
なんとか頑張っていた小十郎さんと佐助さんも睡魔には勝てず、おやすみなさい。
で、残っているのがこの2人と、お酌をする私ってわけです。

「なぁ、注いでくれよっ」

あれだけ飲んでも、頬をほんのり染めた程度の慶次さんは、お猪口を私に出す。

「あっ、はいっ」
「…とっととぉ、いやぁ、青空みたいな可愛い子に注いでもらう酒はまた、格別だねぇ!」

な…!そ、そんな恥ずかしいこと、なんでさらっと言えるんですか!?

「お、お世辞を言っても、今日はこの瓶で終わりですよ!」
「お世辞なんかじゃないさ。ホントに可愛いんだからさ」
「っぅ…!」
「あっ、照れてる照れてる〜!ホント、可愛いねぇ」

う〜!そ、その笑顔には騙されませんからね!!

「おい、俺の前で堂々と口説いてんじゃねぇぞぉ?」

慶次さんより頬を赤くして、明らかに酔っ払ってますって雰囲気をだしている元親さん。

「おい、こっち来い」
「わ、私ですか…?」
「テメェ以外誰がいるってんだよ」

重たい一升瓶を抱えたまま、元親さんの目の前に腰を下ろす。
その前に、彼によって体が反転させられた。

「わっ…」

最終的に私が腰を下ろしたのは、元親さんの膝の上。

「ほらよ、酒」
「あ、あの…お酌しにくいんで、降りても…」
「駄目だ!ここでしやがれ…俺の、傍にいろ」

肩を抱き寄せられ、耳に吹きかけられたお酒交じりの息に、思わず肩を震わせててしまう。

「…息吹きかけるだけでも、この反応たぁねぇ…おもしれぇ」

ニヤリ、元親さんが口元を上げたのが窺えた。

―カプ―

「!!?」

思わず一升瓶を落としてしまいそうになる。
だって…耳を甘噛みされた…!

「こんだけで顔真っ赤にしやがって…可愛いじゃねぇか」

体に力が入らないまま、頬をくすぐられ、身を縮こめることしかできない。
そんな私を、慶次さんがヒョイッと抱き上げた。

「ちょっと元親、青空はまだ初心なんだからさ、それ以上はいじめたらいけないよ」

そして、彼の膝の上に置かれ、頭を撫でられる。
酔っているのでしょう。慶次さんの目が少しトロンとして、今にも寝てもおかしくない瞳。

「テメェ、いきなり奪い取るんじゃねぇ!」
「いいじゃんか。貸してよ…って、元親の承諾はいらないけどさ」
「ああ!?」
「まぁまぁ、せっかくの酒の席だ。喧嘩はナシにしようぜ?」
「…テメェがふっかけたんだろぉが」

愚痴をちょっと零しながらも、私にお猪口を差し出す。

「あっ…」
「ん?どうした」
「お酒、これで終わりです」

最後の一滴がお酒に消え輪を作る。

「あーあ、最後飲まれちまった」

少し残念そうに慶次さんが呟くと、元親さんは注がれたお酒を一気飲み。
その間に、慶次さんは私を床に座らせた。そして、自身の頭を私の膝に乗せる。

「あっ、あのっ、慶次さん!?」
「そんじゃ、酒もなくなったことだし、俺は寝るよ」
「…ああ!テメェ、何してやがる!」

一歩遅くに気付いた元親さん。

「何って、見てわからない?膝枕」
「わかるっつーの!馬鹿にしてんのか!ってそうじゃなくてよぉ!」
「なんだぃなんだぃ、人が寝ようとしてるのに騒ぐなんて」
「テメェのせいだっつぅの!」

ひとしきり言い切ったあと、元親さんは頭をガシガシを掻き、慶次さんを見下ろす。

「どうせコイツの許可、とってねぇんだろ」

そう言って、私を指差す。

「あったりぃ」
「ならどけ。嫌がってんだろぉが」
「そんなことないぜぇ。なぁ!」

私の膝の上でいつもの明るい笑顔を見せる慶次さんに、別に嫌という気持ちはないのですが…。

「私は大丈夫ですよ?」
「ほらな!そんじゃおやすみ〜」
「あっ、テメッ…」

何か言おうとしたとき、すでに私の膝上からは寝息が。

「寝ちゃいましたね」
「…ぁあ。ったく、コイツァ振り回すのがうめぇぜ」
「恋は駆け引き、が染み付いてるんじゃないですか?」
「…ほぉ。なら」

元親さんは私の背後に回ると、丁度あったソファにもたれかかり、私を抱き寄せた。
勿論、私の膝を残したまま。

「俺の『押しの一手』も、受け入れてくれるよなぁ?」

耳元で低く囁かれ、予想外のことに心臓がいつもより大きく跳ね上がる。

「いい抱き枕じゃねぇか。このまま俺も寝るぜ」
「えっ、で、でも座ったまま寝るって、元親さん疲れませんか?」
「疲れねぇよ。テメェを抱いて寝るのならなぁ」

そう囁くと、腕に力が込められる。
お酒の匂いが鼻を突く。すると横からも、寝息が聞こえてきた…。
膝には『駆け引き』の慶次さん。
背には『押しの一手』の元親さん。
どうにも、私もこの体勢のまま寝ることになったみたいです。

「…おやすみなさい」

独り言。呟いて、明かりを消した。






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