秋晴れの今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
世間は新型インフルエンザが流行しておりますので、予防には手を抜かないでくださいね?
空気もだんだんと乾燥してきましたので、風邪も引きやすくなりましたね。
夜も寒いので、もう夏物は寒いです。
我が家では見事に流行の波に乗った人が2名。

「ええと、39度2…!?高熱ですよっ」
「ええー?情けないねぇ、俺様忍なのにさ…はっくしゅ!」
「それに…39度5…こちらも高熱ですね」
「そうか…しかし、飯の支度をしなくては」
「私がやりますから、小十郎さんは寝ていてくださいっ」

1つの部屋に隔離された大人組のお2人は、大丈夫と言っているようですがやはり具合が悪いようです。
でも、正直珍しいなぁ。佐助さんと小十郎さんが風邪をひくなんて。

「はぁ、風邪なんて滅多に引かない自信はあったんだけどねぇ」
「引かないわけないじゃないですか。人間疲れが溜まれば風邪だってひきますよ」

布団に包まる佐助さんの目はいつもよりだるそうで、辛そうだった。

「鈍っちゃったのかねぇ。最近駆け回ってないからさ」
「あっ…ごめんなさい」
「なんで青空ちゃんが謝るの」

だって、私が許可を出さない限り貴方は駆けようとしないんですから。
私が早く気付いてあげれば…。

「青空、顔上げて」

自分であげる前に、佐助さんのしなやかな指が私の顎を持ち上げる。

「まーた自分のこと責めてるでしょ。そんなことして俺等の風邪が治るわけじゃない」
「そうやって自分の自己嫌悪に陥っている暇があるなら…」

見透かした佐助さんに、小十郎さんが続ける。

「…政宗様たちを、何とかしてくれ…!」

ただでさえ風邪を引いて重い頭を抱える。さらにそれを倍増させるような…

「おい、こっちに気がついたぞ」
「コイツがうるせぇからだろっ」
「佐助の不埒者佐助の不埒者佐助の不埒者佐助の不埒者…!」
「ていうかさ、この覗き方は絶対ばれるよなぁ」
「……」

数cmほど開いた扉の隙間から覗く5つの目。
私はおもむろにその扉を開いた。
5人はギクッと肩を上げ、少し後退り。

「皆さん、風邪が移っちゃいけないので、こっちの部屋で静かにしていてくださいね。
 騒ぎたくなったら屋上に行ってください。あ、ちゃんと風邪をひかない格好でお願いしますね。
 帰ってきたら手洗いうがいはちゃんとすること。約束です。
 それと、今日はこの部屋は私以外の出入り禁止ですっ。理由はさきほども言いましたからわかりますよね。
 政宗さんは今夜佐助さんと交換で幸村君と同じ部屋で寝てください。
 以上っ!」

忙しいので、言いたいことは一気に言わせていただきました。

「何か質問はございますか?」

5人は素早く首を横に振る。もうもげちゃいそうなほどに。

「皆さんには不自由をかけますけど、どうかよろしくお願いしますね」
「「「……はい」」」

皆さん聞き分けがよくて助かります!
ついでに林檎とナイフを持って、私は再び風邪部屋へ閉じこもった。

「すまねぇ青空…」
「いえ、気にしないでください。もう1つ食べますか?」
「あ、ああ」
「青空ちゃーん、俺にもぉー」

佐助さんはグデンと、私の背中に力が入らない体を預けてきた。

「きゃっ、佐助さんっ、危ないです!」
「ああ、ごっめーん」
「猿、テメェ元気じゃねぇか?ああん?」
「い、いえ…なんかすんません」

怒るときの息も苦しそう。
本当は高熱で苦しいはずなのに、2人とも平気そうにしているの。

「青空ちゃん、林檎頂戴?」

相変わらず私に寄りかかり、肩に顎を乗せています。
はい、と後ろに手を出せば、その手は彼によって自由を奪われる。
私の手にある林檎兎が、佐助さんに食べられてしまった。

「…ん、美味しい」

しゃりしゃりと私の手から林檎を頬張る。
トロンとした目が、やっぱり風邪引きを思わせる。

「佐助さん、大丈夫ですか?横になったほうが…」
「うん…そうさせてもらうよ」

佐助さんが、素直に布団に横になりました…。
よっぽど具合悪いんだなぁ。きっと今までの分が一気にきてるんだ!

「小十郎さんも、横になります?」
「ああ…青空」

薬と水、林檎の皮とナイフを手に立ち上がったが、気だるそうに私の名を呼ぶ声に振り返った。


「…寒ぃ」

どこか少年のような目で、紅潮した頬で私を見つめる。
今まで持っていたものを棚に置き、彼の前に膝をつく。
内心、小十郎さんが弱気になってくれたことがちょっぴり嬉しかった。

「おでこ失礼しますねー」

いつもはオールバックの髪が少々乱れていた。
前髪を軽く掻き分けてあげて、額と額をくっつけようとする。
しかしその前に、体と体が密着させられた。

「えっ、きゃぁ!」

そのまま私の背中が布団にくっつけられる。
小十郎さんは私を離さないまま、同じく布団に倒れる
その拍子で一気に近づいた顔。
赤い頬の辛そうな表情が、妙に色気が出ていて変に緊張してしまう。

「悪ぃ…体に力が入らねぇ…」

そうはいうけれども、私の腰と肩に巻きついた腕の力はまったく弱くないです。
しかし震えるその腕は、寒いと私に訴える。

「大丈夫ですか?辛いですか?」

ぎゅっと温かくなるように、精一杯彼の背に腕を回す。
反応は何もないけれど、荒い息遣いが耳元にかかる。

「青空、温けぇ」

背中を押され、小十郎さんの腕の中に強制的に入り込む。
そのまま彼は自身の唇を、空気に触れている私の首元にあてがう。
熱い、熱が篭っている唇、荒い吐息。
反応してしまう体を必死に抑え、体温を分け与えていたら、背後に人の気配。

「青空ちゃん、俺にも…」

うなじにかけられた生暖かい吐息に再び、ゾクリと素直に反応してしまう子供体温の私。
もぞもぞと手を動かす佐助さんは、布団に包まりながら開いている部分に私を取り入れる。
熱い2人に挟まれて、まったく身動きが取れない状態。

「おい猿、テメェそこにある手どけやがれ」
「右目の旦那こそその右手どけてくんない?」

…ちょっと触っているところがギリギリなところですが、何も言えません。
というか、佐助さんはいつものことですが、小十郎さんまで…。
お熱があるので、思考回路はショート寸前なのでしょうか。

「青空、寝て、いい?」

もうすでに寝てしまいそうな声に、反対なんてできるわけがなく素直に首を縦に振る。
佐助さんは、ありがと、と小さくお礼を言って動かなくなった。

「小十郎さんも、寝ますか?」
「…ああ」

私の首元に顔を埋めたまま、小十郎さんも動かしていた手を止めた。
静かになった部屋で、私は1つ咳をした。
きっと明日は私が小十郎さん達の立場になるんだろうなと思い苦笑しながら、私は2人に体温を分け与えるために、黙って眠りにつくことにした。


「Shit!小十郎のやつ…熱のせいにして青空に甘えやがって…」
「羨ましいよなー。でも、あんな右目の兄さん初めて見たよ」
「………」
「佐助め…調子に乗っておる…!」
「なんかよぉ……平和じゃねぇ?」
「あ、それ俺も思った!」
「Me too」
「佐助と片倉殿が寝込んでいるからだろうか…」
(お前らが静かにしているからだろう)


安寧秩序



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