「元親ー!早く泳ごうよーっ!」
「テメェが無駄に早ぇんだっつーの!」

夏の強い日差しをものともせず、白い砂浜を駆けていく。
2人はまるで、まだ子供のよう。

「んーっ、やっぱりここの海がいいねっ」

先を行く眩しい笑顔に、元親は頬を赤らめると同時に目を細めた。

「青空、ちっと来い」
「ん?」

元親に呼び止められ、反射的に振り返る。

―チュッ―

少し日に焼けた唇を、そっと小さな唇につけた。

「あっ…」
「悪ぃな、抑えられなくなった」

ニカッと白い歯を見せ笑う。
日に焼けたのか、それともこの行為のせいか、青空の顔は真っ赤だった。
そんな青空を見て元親は、悪戯を思いついたような顔をした。

「そらっ!」
「えっ、きゃぁ!?」

―ドッポーン―

軽々と小さな体を抱き上げ、蒼い海に抛った。

「ぷはぁっ、もうっ、元親ぁ!」
「ははっ、ビショ濡れじゃねぇか」
「ちかのせいだってば!」

もーっと、着物を軽く絞る。

「どうせ濡れるんだ、どう濡れたって変わりゃしねぇだろ」
「でも入り方ってのもあるでしょうが…」
「お、蛸発見」

気がつけばとうの元親は、蛸発見。完全に青空から目を逸らしていた。
青空が、悪戯っ子のような笑みを浮かべているとも知らずに。

「そりゃ!」
「うぉ!?」

―ザッポーンッ―

先ほどの青空のように、元親は海へと倒された。
しかし違うのは、青空もともに蒼い海へ自ら入り込んだこと。
何故なら、体格があまりにも違う2人。
そのため力も男と女ということ以上に差がある。
だから青空は体全部で突進したのだった。

(テメッ、青空…!)
(お返しだよ)

足がつかないような、蒼い蒼い海の真っ只中。
広い海に、小さな2人は漂う。
気がつけば、2人は抱きしめ合っていた。
冷たい海の中、触れ合う部分がとても熱い。

(元親…あったかい…)

すっぽりと腕の中に収まっている青空は、体を預けて目を閉じた。
聞こえるのは愛する人の心音。
波の音など遠くに聞こえた。
元親は自分の腕の中に収まる青空の顎を上げ、口付けをした。
それを合図に、2人はゆらりと浮上する。

「はっ…はぁ…」
「青空…っ!」
「んっ…ふぅっ…」

海よりも深い口付けは、少し塩辛い。
火照った頬が以上に暑い。唇も、触れ合う箇所も…。
波が2人を押していく。ゆらりゆらりと揺れる体。
離れないように首に回された細い腕。
自分から離れないように、細い腰に回された逞しい腕が頼もしい。

「はっ…青空、愛してるぜ…」
「んん…はぁ、私もだよ、元親…っ」

溶けてしまいそうだ。
熱い口付けを交わす脳裏によぎる。
冷たい海水が火照る体を冷ますよう、2人を優しくも激しく包み込む。
深い深い海の底。
沈むのは誰だ、何だ。
甘い意識の底に沈むのは、恐らく私。

溶けそうなほどに



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