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私がこれを選んだのは、貴方の色だったから。
ふわりと新しい羽織に腕を通し、鏡の前で一度自分の姿の確認。

「…変じゃ、ないよね?」

で、でも、これじゃぁあんまりにも元親さんを意識してるってわかっちゃうかな。
でも、でも…。

「おい、青空…」
「ひゃぁ!?」

突如背後からかけられた声に驚き振り向くと、元親さんは明らかに一歩引いていた。

「な、なんでぇ、そこまで驚くこたぁねぇじゃねぇか」
「あ、す、すいませんっ」
「…ん?その羽織…」

きた、と体が強張る。何て言われるかな、似合ってないって、笑われるかな、だったら、悲しいな。
不安で、きゅっと羽織の裾を握り締める。

「似合ってんじゃねぇか」

その言葉に顔を上げれば、彼はにかっと、白い歯を見せて笑ってくれた。
え?と拍子抜けた声を発すると、彼はぽんぽんと私の頭を軽く叩く。

「よく似合ってるぜ」

なんだかまるで子供扱いだけれども、それでも顔が熱く、嬉しくなってしまう私は自分を否定できません。
この笑顔に、言いたい、何故、この羽織なのか、この色なのか。

「あ、あのねっ」

ぱっぱと出てこない私の言葉を、貴方は優しく待ってくれる。

「この、色、選んだの…好き、だから」
「ああ」

ぎゅっと、貴方の色に包まれる。

「元親さんの色で、好き」
「ああ…」

暖かな色に包まれながら、額に接吻を受ける。
瞼、頬、そして

「好きだぜ、青空」

貴方の目しか見えない距離。ふわりと被せられた京紫色の羽織の中で、優しい口づけ。
最初は触れるだけ、次は確かめるように

最後は、この色のように甘く深く。


京紫


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