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「ゴホッ、っ」
「いったッ」
「ケホ、ケホッ、ご、ごめ…ッ、かんで…」
器官に入った唾液を押し出すようにむせ返る。
鼻からも口からも息が出来なくて苦しみ悶えるも、決して拒絶ではないと相手に伝えたい。
「だから無理だって言ったでしょ…こんなのそうそう出来るわけがないんだから」
呆れた声で言われると何故か泣きたくなった。
あの後『ここ、使える?』と細い指で唇を撫でられて、正臣は初めて人のイチモツを口に含んだ。
勿論結果は散々だったけれど。
「一体どういう心境?」
そう不思議そうに問いながらも「大丈夫?吐く?」と咳込む正臣の背中を撫でてくれる手が心地好くて。
正臣は必死に相手の膝に縋り付いた。
「ッ…心が…変わったらだめなのか」
「?」
「好きになったらだめ?付き合ってくれなんて言わない。今まで通りでいいから、ただ、俺も相手に入れて」
なんて馬鹿みたいに涙をこらえる自分は端から見たらさぞ滑稽だろう。
臨也はそんな正臣を面白そうに眺めて一拍置いた。
「………それってヤリ友?」
「……それが、いい、です」
返事は返って来なかった。
ただ臨也の腕が伸びてきて器用に正臣のワイシャツのボタンを外す。
「胸板薄いけど腹筋はあるね」
「っ、」
筋肉をつーと撫でた指先はそのまま正臣の胸の突起を押すと、親指と人差し指で摘んだ。
「あ、あっ」
「感じるんだ?敏感だねぇ」
「んっ」
「下見てい?」
とんでもない願いに羞恥心で顔を俯かせながからも頷けば、いやらしい右手がズボンのジッパーを下げた。
「お。もう勃ってるじゃん。ああ、さっきまでいじってたんだっけ」
トランクスから取り出した正臣の性器を臨也は躊躇なくにゅくにゅくと擦りあげる。
「ん、ぅ、」
「紀田くんチンポだけでかいってやらし」
「っ、ッ、あァ」
ぬちぬちと泡立つ水音が大きくなるにつれて声が抑えきれない。
下半身と頭にだけ血が行き渡っているようで、尿道をえぐられると、正臣は呆気ないくらいに精液を吐き出した。
「はっ、は、っごめ、俺ばっか…あの、手でよかったら」
「いいよ。それよりちょっとあっち向いて」
促されれままに四つん這いになって尻だけ向ける。
パンツも脱がされて尻肉を左右に広げられた。
「ん、っ」
「はは、震えてんじゃん」
「違…嫌なんじゃなくて、じゃ、若干怖いだけで」
「何、紀田くん怖いの我慢するほど俺のこと好きになってくれちゃってるの?」
「て、抵抗されると萎えるって言ったのそっちじゃねーか、ひッ」
ダイレクトに尻穴を指で押されて喉が引き攣る。
さらにぐいぐいと親指が中まで入ってくるのを感じた。
「大丈夫。弄っただけだって。入れたりしないよ何の準備もなしになんて」
「ゴムもないしね」と言った臨也も自分の性器を取り出して勃たせると、正臣に覆いかぶさってきた。
「素股わかるよね?ちょっと内股に力入れて締めてて」
突如太股に感じる熱く濡れた棒。
それがずるずると前後に動いて正臣の性器の裏側を滑る。
「は…、あ、こ、こすれて、っあッ」
「あは…緊張でぶるぶるしてるから股、すごい締まってる。これ、イけそ」
「だ、んな前、触ったら…ッ――ぁ、俺、また」
生き物が這いずり突き上げるような感覚と共に、前から伸びてきた右手で正臣の性器を一緒に擦り上げられて。
さすがゲイ、というか気持ち良い所をピンポイントで攻められ、正臣は快感に咽び泣いた。
「ぁ、あ――ッッ」
「いいよ、一緒にイこっか」
「ああああッッッ」
内股に臨也の白濁が飛び散り、正臣も二度目の射精を味わった。
「は、はッ、ぁ」
「えっろい顔」
「な」
今だ上下する背中をさらりと撫でられ、軽い口づけが唇に落ちる。
そのままちゅ、ちゅ、と首筋を伝い、肩を舌で擽られた。
「んッ」
どこまでも余裕な臨也を未練がましそうに見つめれば「欲張りだなぁ」ともう一度交わされる口づけ。
遊ぶように動き回る舌にただただ翻弄された正臣は、潤んだ瞳越しにうっとりと臨也を眺めていた。
(ヤリ友でいいなんてうっかり言っちゃったけど)
「―――後ろとか口とか、これ、から、上手くなるから…」
(独り占めしたい)
(この人を)
「や、やり方教えてよ…」
(――なんて、欲張りだろうか)
「…ッく、はははははっ」
「わ、笑うな!」
「違う違う。うっかり可愛いとか思ったの」
一通り笑い終えた臨也に顎を掴まれ、視線が無理矢理合わせられる。
睫毛に縁取られる漆黒の瞳が綺麗に細められるのを、ただ見とれていた。
「俺達、付き合っちゃう?」
お隣りさん
どんどん深みに嵌まっていく