※ガチホモ臨也さんとノンケ正臣
※元ネタあります







ジリリリリ


ジリリリリリリリ



けたたましく響き渡る目覚まし音。

いつまでも鳴りやまないソレに、痺れを切らした隣人は預けられたスペアキィを使って部屋に侵入する。



「紀田くん?」

「……ぅ…ん」



これだけの騒音でも目を覚まさないほど朝に弱い紀田正臣は、身体を丸めて毛布にしがみつく。

その様子に隣人の折原臨也はこめかみをひくつかせながら仕方なしに毛布を剥ぎ取って身体を揺すった。



「起きてー」

「……ん…」

「なんでこの音で寝られるかなー。ここ最近毎日じゃない。止められないなら目覚ましかけないでよね」

「うっさいおかま……」

「煩いのは君ん家でしょー?つーか俺はおかまじゃないし」

「いった、」



ぺしんとおでこを叩かれて、やっと正臣の瞼が開いた。

もはや目覚ましは臨也の目覚ましとなり、臨也が正臣の目覚ましと成り果てている。

まだ目がとろんと虚ろな正臣に、臨也は呆れ顔で壁をコツリと叩いた。



「薄いの知っててなんでわざわざ壁際に置くかな」

「――…ね、む…」

「なんですかその顔は。もしかしてかわいいつもりとか?」

「はぁ?だれがそんな」


パシャ


「う」と眩しいライトに思わず目をつぶる。

この音はシャッター音。

目の前には携帯電話を構えた臨也がいた。



「ムラムラするからズリネタに撮ってあげる」

「ちょ…ッ」



思わず携帯を奪い返そうと腕を伸ばすと、鼻頭を人差し指で押し潰された。



「冗談だよ。本気にしないでよね。君みたいなガリンチョには興味ないし」



「これも君のだしね」と携帯電話を投げ返される。

また、からかわれた。



「俺のどこがガリ…」

「ははは。あばら浮いてんじゃん。何このペライ体貧弱――」

(………くそ)

「ちゃんと来てやったんだから起きなよ」



言い返す事も出来ず、口を尖らせながら捲られたパジャマをズボンに入れ直した。

渋々ベッドから起き上がれば、臨也が慣れた様子で台所に立っている。

勿論、正臣の家の台所だ。



「メシどーするの?作るの?」

「お願いします」



隣人とこのように不思議な関係になった原因。

隣人は厭味っぽくて意地が悪くて





―――おまけにホモだった。




『ん』

『は、ふ…』



引っ越してきたその日に玄関で熱烈な口づけをかます現場に居合わせる。



『あ…』

『あ、隣人さん?』

『紀田、正臣です…』

『どうも。折原臨也です。』



第一印象は最悪。



『あん、あん、あああ』



ぎしぎしと鳴るベッドと喘ぎ声。

その夜には部屋の壁が薄い事を知った。


(どうなってるんだ、この向こう……)


煩いし想像してしまうしなかなか寝付けない。

だからあんまり関わらないようにしよう思っていた矢先に――…






(やっば…鍵…ッ、つーかサイフごとねぇ。うそだろ…どこだ、会社か?)



かばんをひっくり返すが見つからず。
無謀と知りつつも、開かないかなと無理矢理ドアノブを回す。



『ねぇ』

『!!』

『夜中にガチャガチャ何やってんの』



隣人が煩さそうに顔を覗かせる。



『あ、や。鍵忘れてしまったみたいで』

『ふーん』



所持金はゼロ。金目の物は定期だけ。
外は酷く寒く、仕方がないからコンビニにでも行こうと考えていたとき



『うち入る?』



そう言ってくれた。



『え』

『あ――、手ぇ出したりしないから安心してよ。そんな警戒しなくても平気だって。俺ノンケ嫌いだし。それに――』



じっくりと頭から爪先まで凝視された。
その視線に思わず物おじしたが、その後臨也はにっこりと微笑む。



『自信過剰じゃない?全然好みじゃないから』

『な…ッ、ちょっとまて失礼だろあんた!俺はそんなこと別に思ってない』

『あーはいはい。失礼なのはお互い様でしょ。夜道で前歩いてる女の人みたいに緊張してるじゃない。誰も襲ったりしないって』

『…っ』



失礼なやつ。

ゲイとかホモとかその前にこいつの性格が問題だと思った。


(確かに俺も、少しは不躾だったかもしれないけど)


そう言いながらも彼は自分を部屋にあげてくれた。


『俺はゲイだけど男が好きなんじゃなくて好みの男が好きなの。わかる?』

こくり。

『それで君は俺の好みじゃないの。わかる?』

こくり。

『だから俺は君をヤリ目線で見てたりなんてことはないから』



そんな事を言われたって未知の世界だ。

怯えるように警戒しながらもこくこくと頷くことしかできなかった。

そんな正臣に臨也が呆れ顔でため息をつく。



『会うたんびにビクつかれると派手にむかつくからやめてよね。俺はケダモノでもゴーカン魔でもないんだから。ここまでの流れはオッケイかな?』

こくり。

『寝るとこはソファ使って。これここの大家さんの連絡先だから朝になったら行ってみれば』



すらすらとメモに電話番号を書いて渡すと、臨也は伸びをして自らの寝室へと向かう。

起こしてしまったのか。

やはり夜中にガチャガチャ煩くしたのは迷惑だったかもしれない。少しだけ、反省。



『出るときは声も鍵もかけなくていいし、風呂も適当にどーぞ』

『………アリガトウゴザイマス』

『んじゃ、おやすみ』



ふあ、と欠伸を一つ噛み締めて臨也は寝室へ入って行った。


(変わった人だけど、変な人ではないの、かも)




その出会いが自分の人生を変えることになるなんて、まだこの時の正臣には知る由もなかった――…




お隣りさん
これからよろしくお願いします



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