「は、…んむっッ、」
口内にあるまじき異物はびくりと震えて白濁を吐き出す。
その堪らない青臭い匂いと味に正臣は思わず顔をしかめた。
何度やっても嫌悪感しか沸かないのは同性だからなのか。
女性にされた経験は多々あるものの、こんな物を口にした全員に今は尊敬、と言うよりは純粋に驚愕を覚える。
(だって俺なら今すぐこいつを吐き出したい)
それでもこの行為を強いる人物は腰を軽く揺すって飲めと示唆する。
(くそったれ)
出来るだけの悪態を胸中で吐きながら喉を鳴らしていると、涙が滲んで拒否反応が食道から沸き上がってきた。
「うえ。っ、げほ、かはっ、ッ」
思わず口を離すと嘔吐に近い感じで精液が胃液と共にシーツに散らばる。
「汚いなぁ」
精神的に、ではあるが、人間の醜い部分も愛せる男だ。
折原臨也は罵りながらも何処か嬉しそうに正臣の頭を撫でた。
ああ、この喉に絡まる汚物を男の顔に吐き付けてやりたい。
そんか強い願望が心の底から沸き起こったが、ほんの少しの理性が後の報復を恐れて押し止めた。
「どうなの?大嫌いな俺のをしゃぶる気持ちって」
くく、と喉で笑う彼に怒りがピークに達した俺は胸倉を掴む(自分は丸裸なのにこいつは上着すら脱いでいない)
「ん」
それでも
押し付けたのは拳ではなく自らの唇で。
首に腕を巻き付けて自分の高さに合わせると、逃さないとばかりに舌を絡ませた。
「…っ」
彼が自分を押し返そうとするのを胸板に感じる。
それもそのはず、俺は口に残った精液をそれはもうありったけ中に注ぎ込んでいた。
「ん…は、ぅむ」
酸味の効いた口内には相手の唾液ですら甘く喉を潤してくれる。
名残惜しげに舌をすすって、ぷはっと唇を離した。
「……」
不機嫌をあらわにしていると思った彼の顔はただ眉をひそめたままで。
口を武器とする男が言葉を発しないのは逆に空寒さを感じる。
次の言動を伺っていると、臨也は自分の指を口に突っ込んで中身を掌に掻き出し始めた。
「…っ、まず。」
こんなのよく飲めるねぇ。と掻き出した白濁をにちゃにちゃ指で弄る。
いっそティッシュで拭いてごみ箱に捨ててくれればよかったのに。
「正臣」
“くん”がつかないのは絶対零度の命令だ。
それでいて顔には極上の笑みを浮かべている。
悪い予感しかしない。
悪魔はくいくい、とこちらに指を拱いた。
「さっさとケツ出しな」
正臣がもう絶対しませんと泣きわめくまで、たいして時間はかからなかった。
仏の顔も三度まで
それでも相手は選びましょう