下唇を啄ばむようにちゅうと音をたてて吸われる。
だから僕は上唇を同じように。

普段は自分の方が絶対優位にあるが、セックスとなると彼の方が何倍も上手で、僕はすぐに後手に回ってしまう。



「ん、んん…ッ」

「した、ね、べろ出して」



べーと芸能人特有の傷一つない綺麗なピンク色の舌を伸ばされて、真似るように舌を出した。



「そう、そのまま」

「んぅ、む、んん…ッ」



舌先をつけ回せ目が合ってくすっと微笑まれると、そのまま擽るように上って口内へと侵入。

互いの粘膜を密着させるこの行為は、唾液を交換したり、吐息を絡ませあったり、声も音も直接耳に響いて、挿入より恥ずかしいときが多い。


黄瀬涼太はキスが好きだ。


擦るときも、挿れるときもだいたいキスをせがんでくる。

だから後背位の方が楽なのに大抵正常位だし。
最初にキスされたときなんて息継ぎの仕方がわからず顔を真っ赤にするまで我慢していたら、鼻でするんだよなんて笑われてイグナイトをお見舞いしたこともあったっけ。



「ふふ、かわい…」



ちゅ、とまたこめかみにキス。

だいたいなぜ彼はこんなにも余裕なんだ。

キスの最中も片手はずっと脇腹だったり手の平あたりを撫で回してるし、まだ身につけてる下着越しにも自分の固いモノを押し付けてくるし!

『可愛い』なんて彼はよく口にするけど本当は嬉しくない。
可愛いってなんだよ。自分は女じゃないのだから。

それでも彼は蕩けきったバニラシェイクみたいに甘ったるい顔を見せるから。

そんな表情をするのが自分の前だけだと知っているからこそ今日も何もいえない。



「………黒子っちの乳首、立ってるよ」

「ちょ、」



今だってほら。



「黒子っちもうここだけでもイけるんじゃない?」

「っッ、…っ、…ふ…」



指で摘ままれていた胸の突起が立ち上がると、その先に自分の舌を尖らせてこちらに見せつけるように舐めあげてくる。



「最初は真顔で『気持ち悪いです』とか言うからほんとショックだったんスよ? よかった可愛がり続けて」



まるで我が子を見るかのように胸に向かって微笑んで口づける。



「変態」

「ひどいっス! 傷ついたー傷ついたー!! いいっスもん黒子っちだけに変態なんだから」

「は、ぁ…っ」



じゅるると少しきつめに吸われて何とも言えずむず痒い感覚に身体を捩じらせる。

確かにその部位は彼によって快感を生み出す場所へと変化させられた。



「きもちい? くろこっち……」



(この目が、毒だ)



情欲に塗れたそれは、じゃれ合うように前座を行いつつも、この後を見据えた肉食動物の獲物を狩る前に近い。

いつもは犬っころみたいなくせに。

それが少しだけ僕を怯えさせて、興奮もさせるのも事実だから、僕はまたこうやって彼を突き離す。



「交代です」

「え」



腹筋を使って勢いよく上半身をあげると、反対に黄瀬がベッドに頭をつける。

無防備にさらけ出された膨らみもない同じ突起に今度は僕が吸い付いた。



「ちょ、黒子っち、んっ」

「きひぇくんらって、こんなにかんひてるじゃないれふか」

「しゃべんながら咥えるのやめて!」



そう言って真っ赤にした顔を両腕で隠してしまう。

僕だって、見たいのに。



「そりゃかんじるよ…好きな人に舐められたら、さ」



なんて腕の隙間から潤んだ瞳で此方を見つめてくるもんだからほんとにもう!



「〜〜〜〜っッ」



今度はこっちが真っ赤になる番だ。

その言葉そっくりそのまま返してやりたい。

こんな恥ずかしいこと、好きじゃなかったら出来るわけがないんだ。



「あ、黒子っちときめいた?」

「……………ッ、」

「やりィ、じゃあ今日は俺が挿れる番ね」



なんて少しだけ頬を染めてしてやったりと満面の笑みで微笑むものだから。



「…………好きにして下さい」

「わーい!」




こうやって、いつも許してしまうんだ。









攻守の決め方





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