「……………」



あの同窓会の後から彼の様子がおかしい。

仕事を理由に家に帰らないことが多くなり、帰ってきても泥酔に、女物の香水を薫らせて。


身体を重ねても心あらず。



「おかえりな、ッ」

「……ねぇ、シようよ」

「……黄瀬くん」

「ほら、黒子っちだって」

「やめ、」



今日こそは話をしようと夕飯を用意して待ち構えていたのに。

彼は聞く様子もなく背後から腕を回して手慣れた様子で服の釦を外してくる。

爛れきった関係ゆえ、黒子も拒むことが出来なくて。

荒々しい口づけを甘んじて受け入れた。



「……ッ…そんなに飲んでだら勃ちませんよ」

「わかんないじゃん、やってみないと…………舐めて」

「ん、ッ」



目の前に出された萎えたそれを器用に唇を割られ、咥内に押し込まれる。



「んぐ…っ」



(いつもはシャワーを浴びてからなのに)


酒に交じってほのかに香る彼の体臭。

断る理由もなくて普段通り舌を絡め、歯をあてないよう出し入れを行う。



「ふ…っ、ん、ん…ッ…」



最後にペニスにちゅ、ちゅ、と音をたてて口づけ、終わったと見上げた先には、彼には似つかわしくない皮肉気な笑みがあった。



「ほら、勃ったでしょ」



どうしてそんな表情をするんだ。

言いたいことがあるなら言えばいいのに。
僕に向かってぶつけていいのに。


何もかも投げ出したい、消え去りたいと思ったとき


―――側にいてくれたのは君だったから。



あの、言葉にしようのない気持ちを返したい。



今度は僕が




「女じゃ勃たねぇんだもん。黒子っちにしか勃起しなくなった責任、とってよね」




そう言って黒子の頬を掌で挟んで、壊れたように微笑む。



―――たとえ、自分の胸が軋んだとしても。





「なんだよ、黒子っちのがたたないの? たてよォ」



呂律が回らないただの酔っ払いだ。

じゅぽじゅぽと大きな音を立てて今度は黄瀬が口淫を目論も、結果は届かず。

元々性には淡泊な方で、今の黒子の心情を表すかのように身体は反応を示さない。

躍起になって奮闘する彼の肩をゆっくり押して、腕一つ分の距離を置いた。


「ねえ…黄瀬くん」

「ん?」

「…………もう、やめませんか。こんなこと…」

「は、あ? なに言ってんの? 黒子っちが勃たなくたって俺が入れればいいんだから問題ないじゃん。ほらケツ貸して…」

「ちょ、」



そう言って無理矢理腰を掴まれ、たいして解されていない窪みに穿たれる。



「…っぐ…、…はッ…」



火花が散るような感覚。


初めてだった。


彼が僕の意思を無視したのは。




「は、はぁ…き、つ…、力、抜いて…」

「む、りです…ッ」



獣と同じ交尾の体勢で荒々しく奥を突かれる。



「ぐ、…ッは…ッ、…ッ……」



最初は痛みに耐えるので精一杯だったが、徐々に慣れた身体が反応して腸液が分泌される。



「は…ッ…っッ、〜〜ッ」



それらが摩擦を減らし少しだけ余裕が出てくると、背後の乱れた息に、快楽以外のものが混じっていることに気づいた。



「きせ、くん…?」

「…………ッ」



それが嗚咽だとわかったのはすぐ後だ。



「どうか、しました……?」

「……………いで」

「え…?」

「……止めようなんて、言わないで…ッ」



黒子の肩甲骨に顔を擦り付けて、彼は涙を流していた。



「黄瀬くん」

「な、に」



腰に回された手に、熱を分け合うように自分のを重ねる。



「顔が、見たいです」



願えば、彼は動揺したように喉を鳴らして、でもゆっくりと身体を反転させてくれた。



「……………」



涙で濡れ、ひんやり冷たくなった頬。

テレビで見かける俳優に勝るとも劣らない綺麗な顔が、汚く不細工に歪む姿があまりにかわいくて、愛しくて。


自分のせいで反れてしまった彼の道を、戻してあげられるのも、また僕かもしれない。





――――ただの自惚れかもしれないけれど。









ひだまりのような



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -