「……ッ、ぅ……」
逆らうことなんて、出来るはずもなかった。
促されるまま黒い布で目隠しをされ、今にも不安は爆発しそう。
目の前に差し出された冷たい手をただただ握り締めていた。
「催淫剤とか使います?」
「ある程度の性感帯は開発済みだから、大丈夫だと思うよ」
「相変わらず下種ですね。ま、俺はそのおこぼれに預かれるからいいんスけど」
どろり。
水よりも粘り気の強い冷たい液体が肩から落とされTシャツの中を流れる。
脱がされる服、這い回る知らない手。
「や、臨也さん!臨也さん!!!!」
暗くて見えない目の前の相手に助けを求めるも、あやされるように頭を撫でられるだけ。
「よくこんないたいけな中学生騙せたもんですよ。はい、口開けてー」
「んぐゥ…ッ」
無理矢理こじ開けられた口腔に青臭い肉棒を遠慮なく突っ込まれる。
(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!!!!)
「ほら、正臣くん僕のだと思って舐めてみて」
――――この人は、なんて残酷なことを言うんだろう。
何がどうしてこうなったのか。
その答えは結局出ないまま、俺はいいように犯され、その間ビデオカメラはずっと回っていた。
「臨也さん、いざ、やさん……」
溢れた涙は全て黒い布が吸い取ってしまい、結局その姿を曝すことはなかった。
♂♀
「はい、これ」
いつもと変わらない朝。
渡された七枚の福沢諭吉だけが昨夜のことを現実だとしらしめていた。
「目隠ししたからね。顔を見せれば君ならもう少し吊り上げられたかも」
臨也は全く悪びれた様子もなく、昨日のことはなにか事情があったんじゃないかという願いに近い可能性は一気に消え失せる。
悲しみ、絶望、無気力―――今の感情をどう表したらいい?
「………臨也さんに、とって、俺は何だった?」
ぽつりと紡ぎ出した言葉。
裏切られた、という怒りは何故か無かった。
一方通行だった。
多分、恋人ではなかったんだ。
「愛してるよ。俺は全ての人間を愛してる。もちろん、君も」
暗に観察対象だったと示唆される。
俺にとって彼は特別だったけど
彼にとって俺はその他大勢の中の一人だっただけ。
「臨也さん…みんなを愛してるっていうのは、誰も愛してないのと同じだよ…」
俺がダメでも
(他の誰かを特別にしないで)
そんな淡い願いを抱きながら
さよならも言わずに逃げ出した。
たった一ヶ月て心も身体も全て持っていかれた
忘れられない
あの夏―――…
ワンサマーラブ
It is no use crying over spilt milk