その後、俺は案の定馬鹿みたいに彼とのセックスに溺れ、今までの情事がいかに子供騙しだったかを知った。


ずっとこのままがいいと思った。


このままでいられると、何の根拠もなく信じていた。


それが、ただの夢だと知ったのは夏休みも終わりを告げる八月の末。



崩壊は呆気なく、そしていとも簡単に訪れる―――…






「―――正臣くんさぁ、もう夏休み終わるよ。帰らなくていいの?」

「ふへ?」



ソファで寛ぎながら氷菓子を舐めていると、パソコンに向かっていた臨也にいきなり声をかけられた。

『帰る』と言われて最初は何のことだかピンと来なくて。

やっと思い当たったのが、忘れかけていた正臣の実家のことだった。



「いいよ。あいつら俺のことなんてどうでもいいんだ。一ヶ月も放っておいて何も言って来ないなんて。ここなら毎日楽しいし、お金にも困らないし」



(なにより)


(臨也さんがいるし)



口にせずとも、一人でにやけてしまう。



「ここの家の子になっちゃおっかな〜」



ぺろり。溶けて棒を伝う甘い汁を舌で舐めあげた。



「お金ねぇ……。正臣くんさ、お金を稼ぐのがどれくらい大変か知らないだろう」

「………別に知らなくたって…」



(臨也さん…なんでいきなりそんなこと言い出すんだ……)



なんとも言えない不穏な雰囲気。

臨也の口調はいつもと変わらず甘いのに、正臣はその異変を肌で感じていた。



「社会勉強だと思えばいっか。正臣くんにいいこと教えてあげるよ」




―――最後だしね。



そう聞こえた気がした。





「入ってきて」

「!!?」



ばたばたばた。

そんな効果音が似合うような。
オールバックの一昔前のような不良を筆頭に、数人の男達が臨也の合図で部屋に入ってくる。



「臨也さん、こいつっスか」

「うん。予定通り、よろしく」



臨也の了承を得た男は、正臣を頭のてっぺんから足先まで舐め回すように眺めてにんまりと笑った。



(予定通りって?)



当然の疑問を臨也に尋ねることも出来ないまま、リーダー以外の数人がビデオカメラやら照明やらを手慣れた様子でセットしていく。

端から見ればこれから雑誌モデルの写真撮影を行うかのよう。

しかしこれが何の撮影なのか、勘の悪くない正臣は気づいてしまっていた。



「ほら、こっち来いよ」



近づいてくる男に頭の中の錆びた警報機がぐぁんぐぁんと壊れたような悲鳴をあげている。

手に持ったアイスをその場に落とし、防衛本能のまま男に背を向けるも、腕を強く引かれソファへ押し付けられた。



(どうして?)



こんなことになったんだ。

現状を受け入れられず、縋るように愛しい人を仰ぎ見る。




「―――――ごめんね。」




そこには


自分を抱くときと全く同じ


甘ったるい微笑みあった。





(誰か、嘘だと言って)








ワンサマーラブ
そして、瓦解



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