その後は結局二人で飯を食って、勧められるがまま初めての酒を満天の星空の下で乾杯した。
「砂塗れだろ? 先にシャワー浴びていいよ」
「え、臨也さんの方が…」
「ん? 一緒に入りたいの?」
「先に入らせてイタダキマス」
中学生なら到底泊まることの出来ないような高級ホテル。
最上階のスイートルームから見える夜景は本当に宝石が散りばめられたように綺麗で、窓にへばり付くように煌めくソレをじっと眺めていた。
(なんで、俺、こんなとこにいるんだろう……)
都会から外れた、ちっぽけな町のいたって普通の中学生。
早く家を出たいとは思っているものの、なんとなくこのまま流れに任せて人生を歩んでいく。
それで自分もいいと思っていた。
シャ―――…ッ
遠くから微かに聞こえる水音。
(あの人のせいだ)
正臣は既に風呂を済ませ、今は臨也が浴室を使用している。
彼に出逢わなければ、今ここにいる自分はいない。
(今日…楽しかったな……)
毎日が新しい事の連続。
その中で感じる穏やかな時間の流れ。
このままでいたい。
これからも、彼と一緒に歩んでいいのだろうか――…?
(…や…ば……ッ)
むくむくと、素肌に馴染む柔らかい白いバスローブを押し上げる下半身の熱。
罪悪感はあるものの、驚きはない。
―――初めてではなかった。
彼のことを思い浮かべながらこの行為に耽ること。
「ん…ッ、……ふ……」
(大丈夫。入ったばかりだから、まだあがって来ない)
臨也の信者は女だけではない。
むしろ男の方が彼に対してそういう感情を抱いている輩が多かった。
(彼は、俺のもの)
低血圧で朝はとろんとした瞳で暫くぼうっとしてたり。子供みたいに意地でもグリンピースは除けて食べたり。
そんな彼を知っているのは俺だけだし、一緒に住んでるのも俺だけ。
俺しか、知らない。
俺の、ものだ。
(――あ、出る)
右手の動きを速め、今にもその劣情を吐き出そうとしたそのとき。
「―――なに、してるの?」
「!????」
そこには今、まさに頭の中を埋め尽くしていたその人が。
「あ、………ッ」
隠す間もなく目の前にさらけ出された、まだ幼い欲望。
(見つかった)
まだ多分に水分を含んだ髪をわしゃわしゃとバスタオルで拭いている臨也は、股間を暫く凝視した後真っ青になっている正臣を見てふっと笑みを零した。
「………誰のこと、考えてたの……?」
そろりと正臣の勃ち上がるソレの先端に人差し指が触れる。
拒絶どころか先を促される行為に頭の中は今にもパンクしそう。
「俺のこと、だろ?」
「!!」
耳に低い声で囁かれるとともにぞわり。快感が体中に広がり、全身の血液が波打つ。
―――やはり。彼にはなんでもお見通しなのだろうか?
頭の片隅で響く、あの時沙樹が言っていた言葉。
(エスパー…?)
なら、隠す必要なんてない。
「臨也さん、抱いて…」
感情のまま、縋りついた胸板は思ったよりもしっかりしていて。
大きな手は背中に回されることなく幼子を慰めるかのように丸い頭を優しく撫でた。
「……いいの?戻れなくなるよ」
「いい、いいの。おれを、臨也さんのものに、して」
後悔は、ない。
台詞は最後まで発されることなく
噛みつくように口づけられた―――…
ワンサマーラブ
今にも、溢れそう