「…………」



隣ですやすやと寝息をたてているこの人をどうしよう。

本当に眠っているのか。
さらりときめ細やかな頬を撫でても彼はぴくりとも動かない。


長い睫毛だけがふるりと震えた。




『一緒に寝る?』




そう聞かれてそっちの意味かなぁ、なんて。それでも久しぶりだし、と一緒にベッドに潜り込んでみれば、5分もせずに夢の世界に突入した折原臨也自称21歳。


眠りにつくこの人は普段の悪質さなどまるで感じられない安らかな寝顔を浮かべているから。

むしろ端正な表情が緩んで自分と同じくらい、いやそれ以上に幼く見えた。



(………ふんっ)



思わず口をへの字に曲げてしまう。


なんだよなんだよなんだよ。


期待したのは俺だけ?


だって一ヶ月ぶりだしご無沙汰だし。

いつもは俺が嫌々言っても何だかんだ言いくるめて搾り出すくせに。


無防備な白い鎖骨とか。薄く開いた唇とか。



「………ッ」



思わず咥内に唾液がじんわりと満ちて、お預けされている犬の気分になった。


なんで寝ているのに色っぽいんだこの人は。



「……いざや、さん」



堪えられない。


軟らかい耳殻にかるく歯をたてながら耳元で囁く。



「……ん…まさおみ、くん?」

「…臨也さん、今日は…シないの?」



瞼をうっすら開け、眠そうな鼻にかかる声で名前を呼ばれたので負けじと甘ったるく囁く。



「んー…、元気だねぇ。おれ…昨日三時間しか…」



あ、こいつまた寝るつもりだ!


こっちがこんなに矜持を捨てて誘ってるに。平手打ちでも食らわしてやろうかと理不尽に憤慨する。



(けど、この人ももう二十後半か…)



時が流れるのは速い。

男の二十代はまだ精力が減退するとは聞かないけれど。

年上と付き合って悩むのはそこだ。時間は越えられない。どうやっても彼は先に年をとり、衰える。

まぁ、この人の場合寿命を迎えるよりも先に絶対誰かに刺されると思うけど。

例えば俺。


そのまま寝返りをうちこちらに背を向ける臨也の後ろにべたりと張り付いた。



(そっちがその気ならこっちも好きにしてやる)



背中越しに温もりを感じながら、さらりと後れ毛をかきあげる。

彼の体臭は嫌いじゃない。

鼻筋を押し付けくんくんと匂いを堪能した後、無防備なうなじに吸い付く。



「……ん……」



それでも起きないのをいいことに、そのまま首筋、肩、肩甲骨。

好きなだけ赤い華を咲かせて、腕を回しシャツから右手を潜り込ませる。



「……ちょ、くすぐったいってば…」



さすがに胸の突起を弄くられれば身じろぎする。

ここぞとばかりに後ろの尻のラインに自分の熱いものを押し付けてたところで臨也がやっと音をあげた。



「あー、もうわかったってば!」



身体がふわりと宙を浮き、仰向けに寝転がる臨也の腰の上に乗せられる。


(あ、ちょっと怒ってるかも)



「俺の貴重な眠りを妨げたんだからその分楽しませてくれるんだろうね?」




そう歪んだ唇に少しだけ後悔しながら自らの唇を押し付ける。




「……………たぶん。」




二人の身体が布団に沈み、スプリングが軋んだ。










年の差7歳
まだまだ寝かせない!



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