「……お前、死ぬのか」




それはまるで独白のように


血塗れで地に伏す男に、クラピカはぽつりと声をかける。



「………ッ…」



クロロはその問い掛けに応えることなく、か細い呼吸を繰り返す。

話すことすら命に関わる苦痛だ。なにせ、心臓下部に穴が空いているのだから。


クロロがクラピカに向けて発射された銃弾を自らを呈して受け入れたとき、クラピカは自分の目を疑った。


一枚、一枚の絵を見るようなスローモーション



彼は撃たれた直後、口元を緩め、微笑んでいた。



「言え!なぜ私を庇った!?死ぬ前に答えろ!」



(不可解だ)


いくら考えても解答など到底出て来はしない。

自身の脳という袋小路に迷い込むだけ。


そんなクラピカを余所に、クロロは小さく喉を震わす。



「……お前を死なせたくなかった…」



(私から全てを奪った分際で…!)


身体を流れる血液がぞわりと泡立つ。



「死など怖いものか!貴様らに復讐するためなら命などいらぬ!!」

「わかっている…最初に逢ったときから…」



思い出したくもない最初の逢瀬。


死体の山、火で燃える家屋、鼻が折り曲がるような腐臭。



「余計なことをして無駄死にするのはお前の方だ!」



激昂したクラピカはクロロの腰に刺してあったナイフを鞘から抜き取り、上下するクロロの白い喉に突き立てる。



「その喉切り裂いて無駄口叩けぬようにしてやる」

「………生きろ」

「まだ言うか!お前の指図は受けぬ…!」

「そなた…美しい…」



クロロがぽつりと呟いた。



「……ッ」



反射的にその場を跳び退く。



動揺



(この男、危険だ)




頬に熱が宿る。



きらり




片耳に輝くピアスが揺らいだ。










クラピカ姫



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