「………立て札見なかったの?」



聞こえたのはどこか眠気を含んだ甘い声。

真っ白なカーテンが折り重なった向こう側、具合の悪い生徒を休めるはずのその場所で

白衣を身に纏った男が横になっている。



「…ふざけるな不良教師」



扉前に書いてあった『保健医外出中につき立入禁止』なんて大嘘。

職権濫用もいいところだ。



「…クラピカは?なんでここに来たの?」



立入禁止って書いてあったでしょ、とクロロは大きな欠伸を一つして上半身を伸ばす。

白衣は勿論皺くちゃ、髪もあちらこちらがぴょんぴょんはねているのに、どこか様になっていて



(なんか、すごく、腹立たしい)



「ふざけるな。高校に入れるだけ入れて私をどうするもりだ」

「……クラピカはさ、」



クロロはベッドから下りることなくちょいちょいと手を拱いてクラピカを呼び寄せる。

まるで警戒心丸出しの野良猫に餌を与えるときのように。



「?」



意図を理解できず眉を寄せながらも指示に従って側に歩み寄った。



「…よいしょっ」

「?!」



腰を両手で捕まれ、難無く身体が宙に浮く。

抵抗する間もないままクロロの腰を跨いで膝立ちになっていた。



「な、なにをする…ッ」

「うーん?なんか背徳的だな、と」

「ふざけるな!下ろせ」

「待ってよ」



両手で顔を押さえ込まれてじぃ、と見つめられる。

クロロという男は26ということだが、漆黒の瞳は何を考えているかわからない、それでいて少年のように純粋できらきらしていた。



「高校、楽しい?」

「は…?」

「友達は出来た?」

「?…ま、まぁ」

「クラピカってまだ17だろ?その年で高校に行ってないなんて勿体ないと思ったんだ」

「………その点は、感謝している…」



頭に浮かぶは仲良くなったクラスメート三人。


温かくて、優しい人達――…


そんなクラピカを見て、思ったよりも皮膚の厚い指がさらりと頬を撫でる。


もう抵抗など出来ていなかった。



「仲間は大事だ。大切にしなよ」

「……貴様がそんなことを言うなんてな。一匹狼かと思った」

「いるよ、俺にも仲間」

「……」



あ、この男にとった大切な人達なんだろうな、と漠然と思った。


思った途端


何故か胸が少しだけ痛んだ。



「これでも仲間にはダンチョーって呼ばれてるんだ」

「別に興味はな…ッっ?!」



やられた。


ふわりと間近で香るミントのフレグランス。


でも何処かで覚悟をしていたし、こうなるのではないかという予感もあった。



「……っ…ん……」




―――口づけ。



放課後のベッドの上で教師と女子高生なんて、在り来りのAVみたいだ、なんて頭の片隅で思った。



(なんでだろう)




泣きたいくらいに






嫌ではなかった






なんちゃって学パロ
学パロって何だっけ



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