単刀直入に言います。



入れ替わりました。




中身が。





臨也さんと俺!!








「は?うそ。なんで?!」



頭を抱えて青ざめるは俺こと紀田正臣。ぴちぴちの17歳。

のはずが、見た目はかの有名な新人の情報屋であり、彼が慌てふためく姿というなかなか拝めない光景が今まさに広がっている。



「首無し妖精がいるくらいだ。今更人間が入れ替わるぐらいで驚くことないだろう?」



全く動じずむしろ目を輝かせて自分の姿を眺めているのも紀田正臣。しかし、こちらの中身は折原臨也らしい。

ほんと、なんで目の前に俺がいるんだ!



「人間の神秘だよねぇ。紀田くんってこんな身体してるんだ。へぇー。ふぅん」

「…変なとこ触んないで下さい。セクハラです」

「いやだって今は俺の身体だし」



けろりとした顔は普段なら死ぬ程ムカつくけど、自分の顔だと殴ることも出来ず。

くそ。やっぱり俺より背ぇ高いし。



「遊んでないで解決策考えて下さいよ!」

「え、なんで。こんな面白いことないじゃない。とりあえず出かけてくるわ」

「は?どこに?」

「池袋。帝人くんにセクハラしてシズちゃんに喧嘩売ってくる」

「やめろォォォ!!!!!!!」



扉に向かおうとする臨也の腕を慌てて掴む。

そうだ。彼が俺になっても得しかないが、俺が折原臨也になったら百害あって一利なし。

このまま外に出られてはたまったものではない。



「えぇー!つまんなーい」

「…俺の顔でカマっぽい声出さないで下さい」

「なぁに。じゃあそれよりも面白いこと“臨也さん”がやってくれるのかにゃ?」



駄々をこねたのもつかの間。ニヤニヤと悪い笑みを浮かべる俺、もとい臨也さんは俺の首に腕を絡ませて上目遣いで見つめてくる。


(なんか、変だ)



「聞いてる?」

「……ッ」



胸が異様にどきどきしている。


(俺の顔なのに)


吐息が絡み合うくらいに唇が近づき、口内にじわりと満ちる唾液。

人差し指で唇を紅を塗るようになぞられた。



あれ



俺ってこんなにエロかったっけ?




「……臨也さん」

「なに、正臣くん」

「………勃ってるんですけど」


自分の身体ではない彼の身体は俺の意思でどうこうできる訳ではなく。



「君もこれぐらい出来ればねぇ」



臨也は惚けたようにやれやれとため息をつき、軽くそのまま唇を合わせる。

自分の唇にキスをするって全くどんな感じなんだか。

でも目の前にいる俺は確かに俺の顔だけど俺じゃない。


臨也は楽しそうに再度唇を寄せ、今度は舌を濃厚に絡めてきた。


え、俺ってキスするときこんな顔するのか。


(あ、唇やわらか)


知らなくていい新発見ばかりだ。



「……ッ」



長く執拗なディープキスを堪能したのち、唾液が作る銀の橋がアーチを描いてぷつりと切れた。



「どう?自分の味は」



妖艶に微笑んで唇を舐める俺に股間が熱を持つ。

いや臨也さんだ。この感情は俺が感じてるんじゃなくて臨也さんの気持ち。

ああもうどっちだかわからない。頭がとろけて馬鹿になってる。


自分の姿に勃起するなんて俺相当変態だ。



「あー。俺の顔でそんな表情しちゃって。とりあえず姫始めでもしちゃう?」

「……夢だ、こんなの」

「初夢は正夢になるっていうけどね」



もう一度口づけを受けて、後はベッドでなし崩し。

自分の感じて喘いでイく姿はそれはもうなんとも言えず。


でも俺はそんなノリノリで腰を振らないし、ましてや騎乗位なんてしたことないのに!




ああ




早くこの悪夢から醒めますように







入れ替わり
彼と出会ったことが、既に


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