長編 | ナノ
「ねえちょっと君。」
城の警備の合間に、私にいつもツンツンした視線を向けてくるやつ(仮にツン太としよう)に声をかけた。ツン太は一瞬驚いたような様子を見せたが、すぐになんの感情も読めない顔で私に視線を返した。
「何か御用ですか、なまえ殿。」
……ツン太意外といい声してるな。
「単刀直入に言わせてもらう。私の何が気に入らない?」
なんかもう面倒だからさっさと本題に入らせてもらうことにする。
「気に入らない……と言いますと?」
「いやぁ〜、相手にわかるくらいの殺気向けておいてとぼけるなんて、ますます面倒なやつだな。」
ツン太は黙り込んでしまった。本当、忍のクセにわかりやすいやつだ。
「よし、じゃあこれでどうだ。幸村様と長には私から提案したことだと言っておくから、一度手合わせしよう。ツン太だって、私のこと嫌ってるってことが二人に知られるのは、これから先なんだかやりづらいだろう?」
あ、ツン太って本人に向かって言っちゃった。
「……そうですね。正直、俺はあなたの実力もこの目で確かめたわけではないし、いきなり忍隊の二番手を任される理由がわからない。自分でも忍として、こんな風に人のことを気にするのは恥ずべきことだとわかっていますが……ここ、真田家の忍は他の忍とは違う誇りを持っているのです。」
ツン太、空気読んでツン太呼びに関してはスルーした。
「……おお、君なんだかんだ話わかるやつじゃん。他とは違う誇りね。まあ、ただの面倒な感情ってわけでもなさそうだな。」
「幸村様と長には、なまえ殿の実力を見てもらうための手合わせと伝えるのはいかがでしょう。これでも俺は、長に次ぐ立場で今までやっておりましたので。お二人も疑うことはないのではと。」
「そうだな、それでいこう。」
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