短編 | ナノ


長編番外
if設定の現代転生話です


ーーーーー

ひとの魂とは不思議なもので
俺は乱世を生きた武将としての記憶を持って生まれた。
物心ついたときから、何百年も前の出来事が頭のなかにあふれていた。
ときには、無理して子供っぽくふるまった。

でも、こんなことは普通ありえないことであって──変に騒がれたり、心配されたりしてまで話す必要はないと思い、誰にも話さずに生きてきた。
愛情を惜しみなく注いで育ててくれた今の両親を悩ませるようなことはしたくなかった。


だが、やはり魂とは不思議なもので
俺が前の人生で心から信頼し、一番長く刻をともに過ごしたともいえる二人に、
今生でも出逢ってしまったのだ。


とはいえ、二人にはあの頃の記憶はないようで、
正直、少しがっかりした想いもあったが、
やはり自分が特殊なのだと改めて自覚し、
二人とは新しい関係を築いている。

今は主従も何も関係ないため、なまえに「幸村」と呼んでもらえることも、少しうれしかったりするのだ。


ーーーーー


まったく、真田の旦那となまえにこの時代で出逢ったときは、
本当にびっくりしたよ。

小さい頃からなぜか、自分は忍なんだっていう自覚があってさ。
でも、あの頃はまだ幼くて、夢なのか本当の記憶なのか、自分でもよくわかってなかった。
確か、4、5歳くらいのときだったかな……自分でも詳しいことはあんまり覚えてないんだけど、母親に、夢というか、記憶の話をしたんだよね。
その内容がさ、たぶん、保育園児が知っていていい範疇を超えたような、生々しい話だったみたいで。

もともと、ちょっと複雑な家庭で生まれた俺は、それ以来だんだん母親に気味悪がられるようになって……気が付いたら俺様を置いて、男のところに行っちゃった。

前世の記憶がなんとなくあったとはいえ、当時はそれでも普通の子どもだったから、それなりにトラウマみたいになっちゃってさ。それ以来、夢や記憶のことは誰にも話してないんだ。
でも、大人になっていくにつれて、あいまいだった記憶は鮮明になっていくばかり。もう、ただの“不思議な夢”では片付けられないところまで来ていて、もう完全に、いわゆる“前世の記憶”だっていう自覚はあるんだよね。

……でも、旦那となまえが何も覚えていなかったのは、ちょっとだけショックだったなー。
ま、今は今で仲良くやっていけてるし、これはこれで楽しいなって思ってるんだけど!


なまえに、「長」じゃなく「佐助」って呼び捨てにされるのも、
な、なななかなかいいかも、なんて思ったり……。


ーーーー


幸村様と長を見つけた瞬間は、本当にびっくりした。
偶然、大学の授業で席が近くになったのだ。

あの軽いノリが健在な長、改め佐助は私に話しかけてきたんだ。
でも、初めて話す同級生としてだった。
幸村様も、今は昔みたいにいちいち赤くなったりすることはなく、
私たちは今生でもすぐに打ち解けた。

二人に当時の記憶がないことを悟ったとき、がっかりしなかったといえば嘘になるが
私自身こんな記憶を持っていること自体が極めて特殊なことだと自覚はしていたし、
すぐに、この時代で新しい関係を作っていければいい、と思った。


そんなわけで、それ以来自然と私たちは、いつも一緒にいるようになった。

今日も3人で、最近オープンしたショッピングモールに来ている。


うろうろしていると、洒落た感じで焼酎や日本酒を売る専門店を見つけ、試飲ねらいで入ってみることにした。



店員さんから渡された試飲用の日本酒を味わいながら、店内を見渡す。
すると、目に飛び込んできたのは、薄紅色の瓶に貼られたラベルに、赤字で記されたその銘柄。



“紅氷柱”




「ブフォッ……!」


「え」


隣で、口を押さえて顔をそむけるのは……


「ちょ、長なに笑ってるんだ」


「いや、別に……って、え、長って……?」


「あ」


「佐助ェ! 口から日本酒を噴射するとは下品であるぞ! 全く……いくらなまえの異名が中二臭いからといって……」


「え、幸村様いまなんて」


「あ、え、いや何でも……って、え、いま、幸村様と……?」


「あ」


「Hey! おまえら、もしかして……」


「貴殿は、政宗殿!?」


「独眼竜にまで出会うなんて……」


「これ以上話をややこしくするなあああああああ」



ーーーーー

ちあきさま、遅くなり申し訳ありません…!
長編設定で現代転生エピソードを書かせていただきました!
中二臭い通り名が、時代を超えて彼らを新たに結びつけることになりました。
みんな平和ボケてるので、ちょっと動揺したらどんどんボロが出ていくのです。
本人たちは別に悪気があって隠したりしていたわけではないので、ただただ「なんで!?」という心境で動揺したのでしょう。

ありがとうございました! 今後ともよろしくお願いいたします!








top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -