短編 | ナノ


「おっ!幸村、その短パンいい色だね〜」


「なまえ、ありがとう。俺には少し派手かと思ったのだがな、佐助が絶対にこの色がいいと言うから……でも、そう言ってもらえてよかった。この色にして正解だ!」


眩しいほどの、鮮やかなイエロー。彼の健康的に日焼けした肌とのコントラストも鮮やかで、視界に入るだけで夏を感じさせてくれるような、そんな色。


「そんなにきれいな色の売ってるところって、そんなにないよね?どこのやつ?ってか、幸村っていつもどんなところで服買ってるのかちょっと気になる……」


「む……いつも佐助に連れられるがままだからな……なんというブランドだったか…」


眉間に皺を寄せて考えこむ。私のどうってことない質問に対しても、こんなに真面目になってくれる。そう、彼はいつだって超真面目なのだ。


「駅ビルとかに入ってる?」


「そう!駅ビルの4階のたしか……あぁ!ここにブランド名が入っていたはず!」


そう言うと彼は、おもむろにシャツの背中部分をたくし上げ、私に見せてきた。
たしかに、ウエストの部分にブランドロゴが縫い付けられており、程よい存在感を放っている。


が、ロゴよりも、ウエスト部分からチラリと見える赤いパンツよりも、気になるものがひとつ。


彼の腰、背骨より右側の腰の部分にみつけたのは、


――タトゥー


拳ほどの大きさで、黒のみを使って彫られたそれは、なんのモチーフなのかわからなかったけれど、私に与えたインパクトはとにかく強烈だった。


だって、彼のイメージは、タトゥーとはあまりにもかけ離れているから。きっと、100人中100人が、彼の腰にタトゥーが入っている姿なんて想像すらできないだろう。平凡な20代女の私には、周りにタトゥーを入れているひとは滅多にいない。たまに見かけても、それはオシャレでイケイケタイプのひとか、芸能関係者だけだったから。


しばらく見とれていたが、なかなか私がブランド名に対するコメントを発さないものだから、幸村が「なまえ?」と、後ろを振り返る。
私はすこし慌てて、


「あー……!ここのやつだったんだね!ここ、男の子の服メインだけど、女の子の服もちょっとあるんだよね!可愛くて好きなんだ〜」


なんて言ってみた。まあ、ここのブランドが僅かにだがレディース展開もしていることと、私がそのブランドを好きということは事実なのだが。


幸村は、ブランド名を思い出すことで頭が一杯だったのか、それともタトゥーが見えているなんて思っていないのか……はたまた、見られようとなんとも思わないのか……私が彼の腰を凝視していたことなんて、気にも留めていないようだった。




……ただ気になったのは、彫られたモチーフに紛れるように、傷跡のようなものが見えたこと。まるで、上からタトゥーを彫ることで隠されているようにも見えたそれは、付けられてからだいぶ年月が経っていそうなものだったが、なぜかひどく痛々しく見えたのは、気のせいだったのだろうか。





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