短編 | ナノ



今生でいつ、どんなふうに再会したかなんて、もう忘れた。
だって、覚えてる必要なんかないでしょ?
なまえは、ずっと昔の世で俺様といつもいつも一緒にいたこと、全部忘れちゃったんだから。



遊び慣れてる男のフリして、理由つけてはなまえを誘った。
もう何度会って、何度体をつなげたかなんてわかんない。
飽きもせずに毎回毎回、夢中になってなまえを抱いて。


なんでもいいから、つながっていたかった。
本当は心のつながりが欲しかったけど、今はこれしかつながれる方法がないから。


ホイホイついてくるなまえもなまえだ。
前世からは想像もつかないくらい、男の扱いに慣れちゃって。
今生で俺様に出会うまでに、一体どれだけの男をたぶらかしてきたんだろう。


……それなのに、そんな余裕ぶっこいてる女なんかになったくせに、
抱かれてるときにふと見せるその顔はなんなんだよ。
何かを必死に探してるような、見えない何かにすがりつくような。
涙は流れてなくても、泣いてるようにしか見えないよ、その顔。


探してる相手は、すがりついてる相手は、きっと俺様なんだって、
思い込むくらいならいいでしょ?
思い出せなくたって、どこかすごく深いところには、一緒に過ごした証があるって勝手に信じるくらいならいいでしょ?



事が済んだあと、いつもなまえはバスローブを羽織って煙草に火をつけるけど、ほとんど吸うことなく灰になっていく。
その落ちていく灰が、なんだか俺様と過ごした時間みたいで、ちょっと自分を嘲笑ってやりたくなった。





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