しわくちゃなシーツの上で、荒れた息も整わないまま抱きしめられる。
素肌と素肌が重なる感覚って、やっぱり心地いい。
私の額に貼りつく、汗で湿った髪をどかしながら政宗は笑みを浮かべた。
「……なまえ、今日も良かったか?」
「うん。」
そう。はじめの頃は、気持ちがいい、それだけのことだった。
お互いの心の穴を埋めるのに都合が良いから、一夜を共にする。
そこに甘い感情なんてひとつもなくて、ただただ快楽に溺れてむさぼり合う。
痛いくらいに激しく、まるで何かから逃げているように。
けれど、いつからだろう。
激しいだけだった情事に、いつしか優しさが見え隠れするようになったのは。
最中に、切なそうに眉間に皺を寄せながら私の名前を呼ぶようになったのは。
事が済んだ後に、こんなにも穏やかな顔で笑みを向けてくるようになったのは。
なにかが変わってきていることに、恐怖を感じる。
今まで抑え込んで生きてきたのに、思い出してしまう。
怖い
怖い
「なまえ……こっち向け。」
政宗の首元に収まっていた私に顔をあげるよう促すと、そっと唇に触れる暖かいもの。
こんな感覚、知らない。
こんな風に唇に触れるものを、私は知らない。
怖くて怖くて涙が出そう。
そんなに優しくしないで。
そんな目で見ないで。
そんなキスをしないで。
そろそろ私が壊れてしまう。
遊びじゃないならもうキスしないで。
(確かに恋だった)
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