……
ひたひたひた…―――
……
ここは …―――
どこだ ……?
歩む先も見えない。
目をつむっているのかと、錯覚しそうなほどに――
暗く禍々しくねっとりとした闇だ。
……
おかしい。
目が全く、闇になれない。
………………………………
『 ―――……、―――― 』
何かが、聞こえた。
耳をすませる。
……
こっちか?
微かだが、確かに聞こえるその音の方へと歩き出す。
……
ひた ……っ ――
すぐに、歩みを止めた。
ぞわりと、後ろの方で何かがうごめいた気配がした。
「――っ!」
生暖かい風がおきて、何かが体に巻き付いた。
身動きが取れない。
……
おぞましいその何かは、呼吸をしていた。
巻き付いた何かの体温が肌を伝わる。
……
まるで、巨大な蛇が巻き付いているとでもいうように。
耳元でその何かが笑った。
『………ククク…っ、―――嗚呼……、なんとまあ無様、無様だなあ……』
「――お前……、一体…――何なの?」
目の端に微かに見えたのは、赤い光を放つ眼だった。
『――さあて……、なんだろう………?待ってた……ずっとなあ。―――なあ、玄の字……なあ、…』
「――お前……、まさか」
……
どく、ん
心臓が跳ねた。
どう、 して
なん、で
な、 んだ
体が震えた。
恐ろしさからではない。
玄は理解した。
……
これが、なんなのか。
「……ああ、そうだね」
声が、震える。
『………思い出した、な……?』
「久しぶりだね…」
手をその何かの体に触れた。
水にでも触れたかのように手が沈んだ。
……
ああ、分かってるよ。
君は、僕の鬼【ココロ】だ。
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