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私はものすごく臆病だ。どのくらい臆病かというと人に話しかけることができな程だ。世間では私のような人間をコミュ障というらしいが、私は多分そのコミュ障の中でも群を抜いて障害が酷いと思う。必要なことを話すときも声のかけ方がわからなくて肩をトントンとして注意を向けたり、服を引っ張って注意を向けたり普通の人が言う「ねえ、ちょっと」や「○○ー」といった声をかける言葉がなかなか出ない。出たとしてもすごく声が小さくて気付いてもらえない。周囲には根暗だとか口がないとか言われるけど、本当は皆とすごく喋りたいのにいざ喋ろうとすると怖くて勇気が出ないのだ。
そんな色々こじらせまくっている私にも最近ようやく話せる人ができた。同級生でイギリスから転校してきたカルラさんだ。
そんなカルラさんと今日はお昼を一緒に食べる約束をしていたのだが一向に来ない。

『(忘れてるのかな?なら、呼びに行った方が良いかな?でも待ってればここに来るかもしれないし…)』

教室まで人を呼びに行く。普通なら当たり前にできる行為でも私にはハードルがすごく高い。だって誰かに自分から離しかけなきゃいけないし、まずその誰かをどうやって決めればいいかがわからない。どうしようかと迷ったが勇気を振り絞って話しかけることにした。これも練習だ。意を決して扉を開けると、そこにはカルラさんと思しき人が女の子を抱きしめてボタンをはずしている最中だった。

『えっ、あっ、しししし失礼しましたぁっ』

それはもう勢いよく扉を閉めて普段では絶対でないような大声が腹の底から出た。もはや自分のお昼の事など完全に抜けていて頭がパニックだった。
あの身長、髪色、マフラー、絶対カルラさんだよね。間違いないよね。そのカルラさんが学校で女の子の制服を脱がしていたってことはそ…そういう事だよね…。そ、そうだよね…カルラさん程の人が私なんかの事好きになるわけないよね…何舞い上がってたんだろう。私。
私はカルラさんが好きだ。身の程を弁えろよって思われるのは自分が一番よくわかっていることだが、それでも好きになってしまったのだ。カルラさんはとても博識で話題が豊富、当然頭もよくて、優しくて、真面目だけどたまに冗談を言ったりして本当に何時間居ても彼と過ごす時間は楽しい。そんな彼を素敵に思い、最近になって私が彼に抱く気持ちが恋なんだという事を知った。叶うなんて思ってはいなかったけど、まさかこんな形で失恋するとは…。
本当は私うざがられてたのかな…だから今日来なかったのかな…そりゃこんな女より彼女優先するのは当たり前だよね。あれだけ気を付けてたのにあんなに気を配ってくれたカルラさんにまで迷惑かけるなんてダメだな、私。これからは、なるべく話しかけないようにしよう。
屋上の端っこで誰の邪魔にもならないようにご飯を食べる。私にはすみっこの目立たない所でひっそりご飯を食べているのがお似合いだ。

「私と一緒に食べるのではなかったのか?」

『カルラさん!あっあの私ならお気を使われなくても大丈夫です。彼女の所に戻ってあげてください。ごめんなさい私気が利かなくて…お昼は彼女と居たいに決まってますよね』

「貴様は誤解をしている」

『誤解?』

「そうだ、まずあれは私の恋人ではない。あれは浄化だ」

『浄化!?』

「あぁ。とにかくお前が思っているような関係ではない」

『そ、そうですか。』

「待ち合わせに遅れたことは詫びよう。わざわざ呼びに来てくれたのであろう?」

『あっはい。カルラさんになんかあったのかなって思って…』

「よく、頑張ったな」

『え…?』

「私の為に勇気を振り絞って教室まで呼びに来たことくらいはわかる。」

誰にもわからないような、他人から見ればとても些細なことで、でも私からすると凄く頑張ったことをカルラさんは理解してくれる。よく頑張ったな、と褒めてくれる。こんなの誰もわかってくれないのに、たったそれだけのことでも私はたまらなく嬉しい。

『カルラさんは本当にお優しいですね。私なんかにもよくしてくれて…』

「それは違う。私は貴様だから優しくできるのだ」

『そ、そんなこと言われたら私調子、のっちゃいますから…』

馬鹿な私はそんなことを言われたら期待する。たとえ貴方にその気がなくとも、私は貴方のことが好きなのだから舞い上がってしまう。

「存分にのるがいい。私は好きでもない女にここまでしないのだから」

『………えっと、つまり……私の勘違いと思いやがりでなかったら……』

「私に愛されるのは不服か?」


救世主


(貴方は私だけの救世主)



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