Short(R) | ナノ
僕の玩具

―超時空の創造主になりたい―

それは私と居るより大切なことなの?

―きっとどんなゲームより楽しいと思うんだ♪―

私と一緒じゃ楽しくないの?私は寂しいよ…貴方は世界に固執して、いつの間にか私の手の届かない所へ行ってしまった。

『白蘭様、入江様からお電話が入っております。お繋ぎしてもよろしいですか?』

「んー、いいよ。繋いで」

ミルフィオーレファミリー。ファミリー自体ができたのはつい最近なのに、今ではあのボンゴレと肩を並べる、いやそれ以上に大きいマフィアだ。そのボスが今目の前で柔らかい座り心地のいい椅子にふんぞり返ってマシュマロをむさぼっている男だ。私の上司にあたるこの人は数年前まで私の恋人だった。勿論、今はもう上司と部下以外の関係はない。私ごときでは釣り合わなかったというのもあるけど、彼が私に飽きてしまった。今の彼が興味があるのは世界とユニという女の子だけ。他は全部興味の対象外だ。

「難しい顔してるね、名前ちゃん」

『そうですか、不快な思いをされたのなら謝ります』

「つれないなー、もしかして怒ってる?」

『まさか、心底敬愛してるあなたに怒りなんて感情は向けたことがありませんよ…それでは失礼いたします』

―愛しては、いますけど―

「待ちなよ、名前」

後ろから抱きついてくるのも、突然名前だけで呼ぶのもズルイと思う。私がまだ白蘭に未練があることをわかっててやっているのだ、この男は。ズルイ、本当にズルイ。でもそれでも抱き疲れて反射的にドキドキする自分の心臓とか、ちょっとでも嬉しく思ってしまう、可能性を感じてしまう自分が愚かしい。白蘭にとってこの行動は単なるお遊びで意味なんてないのに…バカみたいだ。

『っ…そういうのやめてください』

「なんで?今日は僕の誕生日だよ。ぎゅってするくらい許してよ♪」

『欲しいものがあるなら後で手配しますから…こういうのは本当にやめてください』

大きい溜息をついた後、するっと体が離れていって“やっぱりその程度なんじゃん”と思ってしまう自分はどうかしていると思う。後ろを振り向くといつものニコニコ顔の白蘭がいつも通りマシュマロを頬張っていた。

「そういう“マジメ”な所昔から変わらないねー。そこが好きなんだけどさ」

『…』

「ねー誕生日プレゼントなんでもいいんだよね?」

『…ご入用なものなら、なんでも手配いたしますよ』

「じゃあさ、名前ちゃんを頂戴よ」

『…頂戴って、私は貴方の部下なのだから全部貴方のもので』

「そーゆーのじゃなくてさ、もういっかい付き合おう。恋人になって」

は?さすがに我が耳を疑ったけどどうやら聞き間違いじゃないらしい。別れを告げたのも、離れていったのも自分の癖に何を一居てるんだコイツは…。もしかして…からかわれてる?
それがわかると急に腹立たしくなった。いや、彼に怒れる身分じゃないことはよくわかっているけれどそれでも腹の立つ物はたつ。自分勝手すぎやしないか?それとも私なら何でもわがままが許されると思っているのだろうか…ダメだ、今は冷静に話ができない…。いったん落ち着こう。

『白蘭様、嬉しい申し出ですがお断りいたします』

「あれ、もしかして振られちゃった?」

『…失礼しました。』

顔を見ると睨み付けてしまうかもしれないと思って顔を見ずに、部屋を出た。ああ、腹が立つ。自分んを遊んでるとしか思えない我儘な彼は勿論の事、変わらず何年もそんな男を愛してしまっている自分に腹が立つ。
イライラした顔を人に見せないために下を向いて歩いていたら、前方が見えておらず誰かとぶつかってしまった。

『あっ、ごめんなさい。私考え事してて…』

「いえ、大丈夫ですよ。それより気を付けてください。私はかまいませんが、ブルーベルあたりにぶつかったら怒られますよ」

『桔梗様!!申し訳ございません!!』

まさか、真6弔花にぶつかってしまうなんて…こんな言い方は失礼かもしれないがあたったのが桔梗様でよかった。確かにブルーベル様やデイジー様にぶつかったら色々とただでは済まなかっただろう。こんなことでは仕事に支障をきたす…一回お茶でも飲んで落ち着こう。

「いえ、私は白蘭様に呼ばれているのでこれで…」

『はい』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「白蘭様、桔梗です」

「開いてるよー」

いつも通りマシュマロを食べて、いつも通り座っていらっしゃる白蘭様はいつも以上にご機嫌のようだった。満面の笑みだなんて珍しい、ここ最近仕事が重なってあまり機嫌が宜しくなかったというのに…これも彼女のおかげだろうか。

「随分ご機嫌ですね、何かあったんですか?」

「うん、さっき名前ちゃんにね復縁しよって言って抱きついたんだ。そしたら、振られちゃった。ホント、あの子僕の事大好きだね」

「白蘭様、ほどほどになさってください」

「フフフ、だって本当に可愛んだよ。名前ちゃんが僕に振られた時なんて泣いてたんだもん、ホント可愛いよねー」

白蘭様は楽しいことがお好きだ。世界征服も白蘭様を楽しませるゲームの一つに過ぎない。ちなみに今世界征服と同じ位はまっている遊びが、彼女を壊す遊びだそうだ。

「従順すぎて、素直すぎて壊したくなっちゃうんだよ。早く堕ちてこないかな♪」

白蘭様は彼女の事を愛している。それはミルフィオーレの上層部の人間は誰もが知るところだ。知らないのは恐らく本人だけだろう。
聞くところによると、学生時代から付き合っていたらしい。あまり私的なことを公にしない白蘭様は彼女の事に関してはいつも嬉しそうに自慢するのだ。

「彼女が完全に壊れたら監禁できるのにね」

「その間に誰かにとられるかもしれませんよ?彼女、部下には特に人気ですからね」

「その時は、勿論相手をつぶして名前は強制監禁だよ。壊すのはいいけど、僕の手から離れていくのは許さないから。」

僕の玩具

(僕の手のひらで大人しく壊れてね)


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