Short(R) | ナノ
01

私の初恋は残念ながら生きている人じゃなかった。いや、生きていると言えば生きているのだけれど、なんというか次元の壁だ。つまり私の初恋のお相手は二次元のアニメキャラクターだったという事。
もう連載も随分前に終わって、見なくなってから何年もたつというのに、一目ぼれしてから10年経つというのに、その思いは全く薄れることがなく今日に至っている。
私はあの頃とは違いいい年で、周りの子はどんどん結婚をして主婦になっていた。そんな中私は今まで人と付き合う事すらしたことがない。どうしても彼と比べてしまうのだ。「二元と三次元を一緒にするなんてナンセンスだ」というのは良くわかっているつもりなんだけど、私にとっての最高の相手は間違いなくスクアーロで、だから他の男が視界に入らなかったのだ。まあスクアーロに一目ぼれしてから数年たったあたりに私は結婚無理だなと諦めていたし、だから一人で生きていけるようにそこそこに良い給料がもらえるところに就職して自分で生きていけるように、頑張った。人に寂しそうとか、可愛そうとか思われても、私にとっての幸せはこれだったので、知るかって感 じである 。

『あー、疲れた。今日もお疲れ様でーす。乾杯』

仕事を早々に終えた華の金曜日。毎週金曜日は貯め取りしたアニメを見ながら酒を飲んでゆっくりとした時間を過ごす。これは自分のご褒美だ。

『うーっ。なんかもう眠いかも…』

私はそんなに酒が弱い方でもないからこんなに早く眠くなるのは珍しいのだけど酔いが回ったのかうとうとしだす。テレビに映し出されているのはリボーンの丁度雨のリング戦あたり。あぁスクアーロの姿を見ながら眠れるなんて本当に幸せ。
私の意識はいつの間にか落ちた。

『ここ…精神世界?』

目を開けるとそこは大草原で何一つ、誰ひとりいなかった。
起きてるときの私なら「なんだ夢か…」とわかるのに、寝ているとどん な不思議現象が起きても大きく突っ込まずそれが当然の流れかの様に受け入れる。
だから目の前の草原がリボーンに出てくる骸の精神世界と非常に似てても全く疑問に思わない。

「おやおや、珍しい来客ですね。」

『骸?どうしてここに…』

「驚きました。僕の事をご存じなのですか?」

『当たり前じゃん、さっき見たばっかりだもん』

「どういう形かはしりませんが、貴方の居る世界に僕も居るようだ…ここがどこかわかりますか?」

『骸の世界でしょ?』

「厳密に言うと少し異なりますが、今はその解釈で結構。貴方が私の世界にコンタクトを取ることができたのは、貴方のその強い思いによるものです。彼は特殊な力を持ち合わせていませんから、 だから僕の所へ来たんでしょうね」

『ん?何が言いたいのかさっぱりだよ?』

「今はわからずとも目が覚めてからならきっと意味が理解できますよ。近いうちに貴方の愛してやまない人がここに来ます。」

『スクアーロ?』

「ええ、彼もまた貴方を探しています。私はいつでも待っています。時がきたなら強く呼びかけなさい」

そうすれば、またここに来れるでしょう。
残念ながら夢は覚めてしまい、でも生まれて初めて夢の中で骸にあえて私のテンションは最高潮だった。このさめきれない興奮をすぐに親友にぶつけたい。と思った時にはすでに手が文字を打っていた。

“聞け、聞いて驚け”

“朝からなんだよ…私は今寝るのに大忙し”

“夢で骸 さんでてきた。”

“なんだと、ちょっkwsk”

夢で起きたことを事細かに説明する。親友もリボーン好きで、大本命は何と骸。私の夢に骸が出てきたのを知ると何とも悔しそうな顔をしたスタンプを連打してくる。

“てかそれどこのトリップ夢だよ”

“それよ…どっかで見た小説が妄想になったのかと思ったわ”

“それじゃね?wwwwwあーーー夢でいいから骸様に会いたい!会って三又槍でぶすってされて地面に転がったところを踏まれたい”

“まーあれだ、もし私が近頃消息絶ったら飛んだという事で”

“あ、はい(真顔)”

こんな会話に乗ってくれるのは親友くらいだ。
絶対夢だとわかっているのにその先を考えてしまう。スクアーロと生活で生きるというif、今の生活とスクアーロを天秤にかけた時私は間違えなくスクアーロの元へ行く。今まで10年の間会いたくて会いたくてたまらなかった。一度も大本命は揺らがず、必死に思ってきた。第一私の人生がほとんどスクアーロ中心になってしまっているため、天秤なんかにかけなくても、もうすでにスクアーロの為に生きているのだから「スクアーロに会える」という事実以外トリップしたところで何ら変わらない気がする。

『どうせならスクアーロに会いたかったなー』

ゆっくり息を吐きながら紅茶を飲んで休日を満喫していると突然あたりが草原、あの夢の世界になった。先ほどまで紅茶を飲んでいたはずなのに、突然おきたこの現象にまたも頭がおいてけぼりを食らっている。どういう 事だ?しかも今回目の前に居るのは骸ではなくスクアーロ。
こんなに会いたい会いたい、あったらこんなことやあんなことをしたいと思っていたのに、いざ会うと顔が真っ赤になって何をしゃべったらいいのか頭が真っ白になる。嬉しくて涙が止まらなくて絞り出すように出た声はたった一言だけだった。

『やっと…やっと会えた』


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