Short(R) | ナノ
5分間の10年後

『あ"ぁぁぁぁぁ!このクーポン今日までじゃん』

財布の中に、お会計の時に出すと割り引いてくれるナミモリーヌのクーポンがあった。しかも期日は今日、これは行くしかない。あのお店のケーキはほんっとにおいしくて特にシュークリームが絶品だ。少しお高めな値段ではあるが、値段以上のおいしさなので頑張った自分へのご褒美としてたまに買に行く。善は急げとナミモリーヌへ行くためすぐさま家を出た。何買おうかな、やっぱシュークリームかな…いやいやクーポンがあるんだからここは大胆に二個買って…と何とも食欲に忠実な私はそんなことを考えながら歩いていた。

「危ないっ!よけてぇぇぇぇ」

『え?』

そーいえばおばあちゃんが考え事しながら歩くと危ないよって言ってたっけ…。ごめんおばあちゃん歩いてたらまさかバズーカが降ってくるなんて思わなかったんだ。グッパイ私の人生。

ボフン

『?????天国ってこんなもわもわしてるの?ってかこれけむりじゃね?え?』


何が起きたのかわからずとりあえずもくもくした煙が収まるのを待つと私は見たこともないような部屋に居た。
天国って随分リアルだな…私もっとメルヘーンな感じだと思ってた。ほらユニコーン的な?ピンクと紫の空的な?ここはどちらかっていうとベッドと机とパソコンがあって、まるで誰かの部屋みたいだ。ん?これは私の天国生活は今日からここってことかな?そのための部屋なのかな?

コンコンコン

「名前、支度できたかぁ………」

『名前ですけど?』

誰だこのイケメン…?扉が開いたら突如イケメン登場で意味わからなすぎてクエスチョンしか頭に浮かばないんだけれども…。

「お前10年バズーカにあたったのか?」

『バズーカには当たりましたね、ん?10年?』

「こまけぇ事は気にすんなぁ、これは夢だ。あと5分したら覚める」

『なんだぁ夢かぁ』

そーだよねー街中歩いててバズーカが飛んでくるわけないもんねー。あれ?何処からが夢なんだ?もしかしてナミモリーヌのクーポンから夢だったとか?チクショー!それなら夢の中でたんまり食べたかったわ。でも、こんなイケメンさんに会えたならまあいっか!

『ここが夢なら…えいっ』

「う”お”っ」

銀髪のイケメンさんに抱きついてもタダだしーナミモリーヌ食べそこなったんだからこれくらいしても罰は当たらないよね?

『くっそタイプだから抱きついちゃった』

「えらく積極的じゃねーかぁ」

ニヤニヤしながらこっちを向く銀髪のイケメンさん。そんな顔すらドキドキしちゃってホント顔綺麗って得だなと改めて思った。

「いつもこんくらい素直ならオレも大助かりなんだがなぁ…ツンケンしてるお前も勿論可愛いがたまには今みたいに素直なの悪くねぇな」

『なんか照れちゃう…えへへ』

「お前今好きなやついんのか?」

『いるよー!同じクラスの子でねとってもカッコイイ人なんだけど、めちゃめちゃ女の子に人気があって私なんか見向きもされないだろーなーって感じ。だから片思いなの』

「誰だぁ?そいつ」

『お兄さん言ってもわかんないと思うけど獄寺くんっていうの。その人も同じ銀髪なんだよ。夢だからお兄さん髪の毛も獄寺くんと同じ銀髪になったのかな?』

「何っ!?お前オレが初恋って言ってたじゃねーかぁ!」

『えっ何何?どうしたの?』

「…何でもねぇ」

『お兄さんは今恋してるの?』

「してるぜぇ。結婚してから5年、出会ってから今日で丁度10年になるが、一度も愛しく思わなかった日はねぇな」

『素敵だね。そのお姉さんが羨ましいなーこーんなイケメンものにしちゃうなんてさー』

「あれはいつも素直になれなくてツンツンしてるが、そのあと恥ずかしそうに甘えてくる姿がたまらなく可愛くて、愛しく思えるんだぁ」

『本当に好きなんだね。その思いお姉さんに伝わってるといいねー』

「あぁ」

そういったお兄さんはこっちを見ながら愛しい者を見るような目で私を見てきてつい私なんじゃないかと思ってしまう。いやこれ夢なんだけどね

「お前はもう少ししたら人生の転機を迎える」

『えっ???何々!!予知夢??それでそれで?』

「ある一人の男と出会う」

『あっ!運命の出会いってやつー?』

「お前はオレに運命の出会いだったと言ってたな」

『きゃあーーーー!そーなんだ!それで?その人はどんな人?』

「…会えばわかる。」

『きになるなぁー』

「そいつはお前に一目惚れするぜぇ。なにせ会った瞬間から囚われてたんだ」

『えぇ!?なんかドラマみたいだねー』

「…そろそろ5分か…」

『えぇーこれ延長とかないの?もっと知りたい』

「…そのうちわかる。オレの名はスクアーロ。将来お前の旦那になる男だぁ」

『えっ?』

めちゃめちゃ気になる事を言われた瞬間、また突然煙がもくもくとでてきて、見渡すとそこはナミモリーヌの前だった。

「お客様、ご注文がお決まりできたら承ります」

『えっ?あっ…あのシュークリーム一つとサバラン一つ。』

お財布にはしっかりクーポンが入ってて、なにがなんだかわからなかったけど、とりあえずお腹は空いていたのでケーキは買った。あれが俗にいう白昼夢というやつだろうか?

『運命の人ねぇ?』

ぶつぶつ独り言を話している私はさぞ不気味だろう…。でも最後のセリフが気になりすぎて頭から離れない。考え事をしていたせいかまたも何かにぶつかる。私よ…夢とはいえさっきバズーカが当たったばっかりなんだからいい加減学習してくれ。

「あっぶねーなぁぁああ」

『あああああケーキィィィィ』

ぶつかった拍子に下に落下したケーキ。あぁせっかく割り引いて二つも買ったのに…3秒ルールでオッケーにならないだろうか、これ。

5分間の10年後

(え?え????(この人さっきの人だよね?)なにこれ運命かよ)

(悪い…大丈夫だったかぁ?)

(大丈夫…です…(いや、ケーキも頭も大丈夫じゃないけど))

(その状態じゃ、食えねーだろ。侘びだ、うまいケーキ屋に連れてってやる。行くぞぉ)

(えっ?でも…)

(わかんねーかぁ?オレとデートしねぇかってお前を誘ってるんだがな)


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