Short(R) | ナノ
歪んだ愛

「そのドレスは貴方が着るために生まれてきたもののようだ。美しい…赤と迷ったんですが青を選んで正解でした。その冷たさが貴方と調和している。」

『あら、ありがとう。だけどこれ一人じゃ脱げないわ』

「…そのつもりで送りましたから」

『フフフッ…貴方が脱がせてくれるの?』

「ええ、男が服を送るなんて結局そのためですから…愛しい人…」

背中のファスナーをゆっくりと下ろされ、どんどんあらわになってくいく背中にキスの雨が降り注ぐ。一瞬だがところどころ痛むキスは赤くなり所謂キスマークが付けられている。男は自分の所有物のマーキングは必ずするもので、おかげで私にはいくつもの赤い痣が付いて居る。中には痣どころか歯形がついてあるものもあるが、それは彼の独占欲によるものなのだと思う。本当に可愛いことだ。
するする脱がされていったところから徐々に手が侵入してきて、骨ばった男らしい手で胸をやわやわと揉まれる。

『ふっんぁっ…あっ…』

「綺麗ですよ…名前」

『あぁっ…最初っからそんなに激しくされると持たないわっ…』

「余裕のない貴方は可愛らしい…もっと激しくしたくなる」

お互い甘い息を吐きながら情事に夢中になっていると僅かに廊下から音が聞こえた。普通の人には聞こえないような小さい音で、強い殺気を出しながらこの部屋に近づいてくる。丁度男が絶頂を迎える直前に、男の胴と首は離れて頭が床に静かに転がった。あぁ、せめて私のいないところでしてくれたら…思いっきり血を被った。

『スクアーロ…貴方自分の顔鏡で見た?凄い顔してるわよ』

苦しそうで、でもぶつけられない怒りがあって、それが顔前面に出てきている。
男の胴を床に蹴り飛ばし、剣を外して私を押し倒してくる。噛みつくようなキスとさっき男が付けたキスマークの上から食べるように歯形を残していく。

「お前は…お前はオレのものじゃねぇのかぁっ」

『スクアーロのものだよ。』

ぎゅーっと抱きついたスクアーロは大きいのに弱弱しくて、泣きそうな顔をしていた。愛しているのはスクアーロだけ、だけどセックスはスクアーロ以外の人とする。デートもスクアーロ以外の人ともする。傍から見たら完全に浮気なんだろうけど、私はスクアーロと付き合ってから他の男に心動いたことは誓って一度もないから、浮気ではないと思う。

『こんな私が嫌い?』

「うるせぇ…」

『好き?』

「この世の誰より愛してるに決まってんだろーがぁ。愛してなかったら…どんなに楽だったか…」

『そんなこと言わないで、私も貴方を愛してるわ』

「お前は中毒性のつよい麻薬みてぇだぁ。欲しくて欲しくて禁断症状まで出やがる。毒だとわかってても手放すことなど絶対にできない。そんな女だ。一体オレはお前のなんなんだぁ?お前の一番にはなれねぇのかぁ?」

スクアーロは今も昔も一番だ。本人に言ったことは一度もないけど。可愛い可愛いスクアーロ。私の言葉に一喜一憂するスクアーロ。あぁ、麻薬みたいなのは貴方の方。私の方が貴方を手放せないのだから。

『ねぇ、スクアーロ言葉より感じあおうよ』

「お前はいっつもそうやってごまかすんだなぁ」

好きよ。そんなことを言っても愛し合ってくれる貴方が。辛くても決して私を責めたりしない貴方が。
すでに交わっていた私のそこは十分すぎる程濡れていて、スクアーロのそそり立つそれを受け入れる。消化不良に終わっていただけに余計に行為が気持ちよく感じる。それに実際どんな男よりもスクアーロとのセックスが一番気持ちい。

『はぁっ…あんっあぁあっすくっあーろっ』

「…っ」

『すっごいきもちっ…』

ビクッと中で震えるそれ。スクアーロはいつもセックスの最中に名前を呼ばれるとビクビクして、イキそうになるのかその後少しだけ腰の動きを緩める。

『激しくしてぇっ…ダメ?』

「あんまもたねーぞぉっ…」

『いいよ。一緒にイこう』

その言葉に合わせて律動がどんどん早くなる。
私が浮気する前はそんなことなどなかったのに、最近イキそうになると私の首を結構強めの力で占める。一応こういう職業からかギリギリ力加減でしてくれるので死にはしないがこれが結構苦しい。最初は私の締まりが悪くてそうされてるのかと思ったけどどうやら違うようだ。
ギリギリのラインで首を絞めてくるスクアーロは何故かいつも泣きながら私を見てくる。その瞳はすごく悲しそうで、気持ちいいことをしているというよりはまるで拷問を受けている表情に近かった。

『はっすくあー…はぁっ』

「名前愛してる、愛してるんだぁっ」

息をして精々名前を呼ぶのが精いっぱいな私は私もだよという言葉がいつも言えない、そして貴方の悲しそうな顔を見ていつもイってしまう。悲しくて悲しくて苦痛に満ちたその顔を私が作っているのかと思うと興奮してしょうがない。

『いっくっ…』

「う”っぁ”っ…はぁっ」

果てた瞬間緩まる首と繋がったままスクアーロが倒れてきて、私の頭を撫でながらきつく抱きしめてくれる。おそらく自分の行動に罪悪感を感じての行動なのだろうけど、仕向けているのは私だ。

「すまねぇ…」

『大丈夫だよ、愛してるよ』

「好きなんだ…だからどこにも行かないでくれっ」

行くつもりなんて毛頭ない。貴方のその顔を見るために私は全てを仕向けているのだから。わざと嫉妬させて、憎ませて、傷つけて貴方の感情を全て私でうめたいの。可愛い可愛いスクアーロ、どうか何も知らずに最大級の愛を受け入れて。

歪んだ愛

(すべての感情を私で満たしたい)

(たとえそれが憎しみでも)


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