『ごめんっごめん…あのねあのね、捨てないで…捨てないでスクアーロ』
「とりあえず話だぁ」
『…別れ話するの?聞かないよ…』
「しねぇ…だから、ここじゃなくてそっちで話させろ」
会いたくてたまらなかった彼が目の前にいる。それだけでもう今までの疲れがすべて吹き飛ぶようだった。だけど、暫くすると「何で帰ってきたんだろう」とか「どうしてでていっちゃったんだろう」とか「そもそも私の事もう嫌いなのか」とか色々頭に浮かんできてスクアーロと話すことが怖くなった。会話が始まって何かを知ってしまえば私はスクアーロから離れなければならなるかもしれない。それなら…それなら知らないままでいい。何も知らにまま横に居てほしい。横に居てくれるなら私は何もいらないのだから。
「悪かったなぁ急に出てって…」
『スクアーロ、枷外せたんだね…そんなに器用だとは思わなかったな。』
「…」
『もし、スクアーロが私から離れたいと思ってるなら…私死ぬよ。脅しに聞こえるかな?でも本気だよ。私ね、スクアーロが居なくなったとき寂しくて悲しくて自分が自分じゃなくなって正気を保てなかった。自分が何のために生きるのか、これからの人生を考えられなかった。それって死んでるも同じだよね。スクアーロに愛してもらえないなら居る意味ない…』
「まず別れることはねえから安心しろ。急に出ていったのは別にお前に嫌気がさしてとかそんな理由じゃねぇ。他の女に目移りしたからってわけでもねぇ。」
『じゃあなんで?私…本当に不安でたまらなくて…』
「オレが…オレが不安だった」
『スクアーロが?…ごめん、もしかして私スクアーロを不安にさせてた?』
「お前のせいじゃねえ。オレが何も言わなかったのが悪いんだ…全部話したらお前はオレから逃げていくんじゃねえかって」
『そんなわけ!!』
そんなわけない。私はどんな人間だってどんな秘密を持ってたって逃げるわけない。スクアーロが人外でも国から追われるような秘密組織の構成員でも殺し屋でも今更それを知ったからって逃げるほど私の愛は軽くない。そんなことは二人で生きていくうえでほんの些細な問題だよ。
「だから試した。お前の前からオレが消えて一体どうするのか」
『それで…私は合格点を貰えたの?スクアーロの横に居てもいい?』
「…お前が、オレが何をしてもどんな人間でも離れないって誓うならこの手をとれ。だが、もしお前が違う想いなら今ならまだ間に合う。オレの事を忘れて」
『意地悪だなぁ…そんなこと聞かなくてもわかるでしょ』
スクアーロのだらんと下に下がった手を掴む。血の通ってる義手じゃない方の手。スクアーロの熱が直に伝わってくる。その手はすこし汗ばんでいて余裕のなさがうかがえる。
普段はこんなに手汗も酷くないし、どんな時も涼しげな顔をしていたのに今は見たことがないほど辛そう顔をしていた。
きっと貴方は私の未来を考えているから辛そうな顔をするんだよね…スクアーロが何に不安を抱いているのか、具体的なことは何一つわかっていないけど私にとって貴方が隣にいないこと以上に辛いことなんかありはしないよ。
『愛してる。だから傍に居させてください』
「あぁ。オレと一緒に来い」
愛してるの証(これでスクアーロは私のものだね)
おもちゃ箱には大事なものを入れておくの、だって大事なものはしまわなきゃ
小鳥さんは鳥かごに入れておくの、だって外は危険でしょう
愛しい人は恋人という箱にしまい、依存の檻に入れなきゃいけない
そしたらもう貴方は私のもだから
『あれ?私は…』
私はいつからこんなことを考えるようになったんだろう。最初は本当にただ愛しかっただけなのに…
『でも、こっちの方が心地いいから…』
fin…?