『スクアーロ!今日は出かけに行こうか!』
本当は今日出勤日だったが、無理をして休みをとった。絶対上司に怒られるぞと覚悟しつつ連絡したが、昨日の私の形相が余程すごかったのか「ゆっくり休め…」の一言だけだった。
お言葉に甘えて今日は久しぶりにスクアーロと外デートをしようと久しぶりに気合を入れて服を選び化粧もした。こんな心弾む感覚は何日ぶりだろう。自然と笑顔になってしまう。
スクアーをそのまま外に出そうとしたら「流石に風呂に入らせてくれと」真剣に懇願されたためしかたなく許可した。私はどんな匂いのスクアーロも大好きなのに…。
「いくぞ」
『うん』
シンプルな服装に身を包んだスクアーロは誰がどう見てもいい男で改めてこの人が好きだと感じた。別に容姿だけが好きなわけではないけれど、ふとした瞬間の横顔や、ぼーっと外も眺めている顔がカッコよくてその度にまた恋に落ちる。
特にデートプランもなく外に出たが当てのない散歩の様なデートもスクアーロとしているとそれだけですべてが特別に思えた。
ただずっと散歩するのもそれはそれでいいかもしれないが、折角のデート。どうせならデートらしいことがしたいと、大型のファッションビルでお買い物をすることにした。
近くには百貨店もあるから、これからスクアーロと一緒に暮らすうえでほしいものの下見もできるし一石二鳥。我ながらとても名案だ。
『スクアーロこれどうかな?とっても綺麗な青だし、スクアーロに似合うんと思うんだ』
「いいんじゃねぇか…」
『もー、ちゃんと聞いてる?』
「当たり前だろぉ」
そっけない生返事に顔を近づけてスクアーロの真偽を確かめた。というのは嘘で、本当は顔を近づけてドキドキさせたかっただけなわけだけど、私がギリギリのところで止まったらスクアーロの方から顔を近づけられてキスされてしまい逆にこっちがドキドキした。ずるい。
こんなデートができるなんて夢みたいだ。ずっとずっとこの時間が続けばいいのに。スクアーロは隣にいる私しか見てない。他の女なんか目もくれない。こんな世界でこそ私の描いていた世界はようやく実現する。やっと思いが一つになった。
「スクアーロ!!暫く連絡取れなくて心配してたのよ」
やっぱり外は危険だ。だって見も知らない女がスクアーロの腕掴んで攫おうとしてる。派手な格好をした女がスクアーロを見つけるなり、走りながら寄ってきた。
スクアーロの方はまんざらでもなさそうに私にも向けるような優しい笑顔で女に対応していた。何それ意味わからない。私が彼女なのに、私のこと好きだって、愛してるって言ったのにその女にも同じことするの?
私が横に居ながら完全無視でスクアーロに話しかける女にもイラつくが何より嫌がるそぶりを見せず快く女に対応するスクアーロにイラついた。
「ねぇ、こんな色気のない所よりもっと素敵な所に行きましょう」
「お前が喜ばせてくれるんだろーなぁ?」
「勿論よ」
『…失礼。今はこの人私とデート中なの。大変癇に障るからそういうのやめてくれない?』
「でもそのデートが楽しくないから私と変わってもいいって言ってるんでしょ?貴方じゃ役不足なのよ」
私を見下げて馬鹿にしながらスクアーロに腕をからめて自分の方に引き寄せて前に進もうとする。そうはさせまいと絡ませる女の腕を引きはがし、スクアーロから完全に引きはがしたところでその女にタックルをかましスクアーロの手を取って走ってその場から逃げた。
後ろから喚き散らす女の声が聞こえてくるが構いはしない。人の男を勝手にとった罰だ。足でもなんでも捻ってろ。
人気のない誰の邪魔にもならない暗がりへスクアーロを誘導し行き止まりの場所で逃げ道を絶ち、スクアーロに詰め寄った。
『スクアーロ私の事好き?』
「愛してる」
『愛してる!?よくそんな言葉が言えるね!じゃあなんであの女の所に行こうとしたの!?』
他の女の所に行こうとした人間がまるで何事もなかったかのように平然と愛してるなんて言うものだから、その言葉が本来さす意味を本当に理解していっているのか疑いたくなってしまう。
やっぱりスクアーロを外に出すのにはまだ早かった。大事なものは外に出しちゃダメだった。スクアーロは素敵な人だから、さっきみたいな阿婆擦れに騙されてしまう。
『…帰ろう』
「もういいのかぁ?来たばっかだぞ」
『いいよ。もうよくわかったから…』
「元気ねーな…どうしたぁ?」
凄く心配そうな顔をしてのぞきこまれたが、今は自分の心がぐちゃぐちゃでスクアーロに気を使える余裕がなかった。口を開けば暴言が出てしまいそうで。それでも抑えきれず、ついスクアーロに強い口調で言ってしまった。
『うるっさいなあああ!!誰のせいだと思ってるの。スクアーロがフラフラするからこんなに苦しんでるのに大丈夫かって…大丈夫なわけないじゃん』
「…今のオレは何してても百合の気に触るみてぇだな」
私が突然大声を上げて罵倒したのが気に触ったのだろうか。言うだけ言ったくせに、スクアーロがどっか行ってしまうのではないだろうか、嫌われるのではないだろうか。もしかして捨てられるのではないだろうか。そう思ったら強くしがみついてしまった。
『ごめん。こんなことが言いたかったんじゃなくて…お願い嫌いにならないで』
「少しは冷静になれたかぁ?」
『うん。ごめん…』
それ以上言葉はなくて怒っているのか、呆れているのか。気まずく微妙な雰囲気のままデートは終了となった。
貴方は誰を見ているの(その先は私だけのものなのに)