04


時は来た。
お風呂から上がってきたカルラはどうもそのまま私の部屋に来てくれたようで、少し濡れた髪が色っぽくてそういう事をこれからするんだと、意識してしまう。私は初めてだし、そういう行為の映像を見たことがあるわけではないから何とも言えないのだけど、こういうのは雰囲気作りからというのを耳にしたことがあった。こんないかにも“これからやります!”という雰囲気を出されるとなんかこう…初心者の私としてはどうしていいのかわからない所がある。
ただただ顔を赤くしてどうすればいいのかともじもじしている私とは対照的にミネラルウォーターをコップに注ぎベッドに腰掛けて飲んでいて、凄く落ち着いている。

「そう身構えるな」

『すいません、どうしていいのかわからなくて…こういう時どういう対応が正解なんですかね…』

「どうするもこうするもない。私達がこれから行うのは、子孫を残すという目的の為の行為にすぎん。ならば雰囲気などどうでもいいと思うが」

確かにどうでもいい。ただ私は不安なのだ。未知の体験とあの母の映像が脳裏に焼き付いて嫌悪してしまうという事が。それを少しでも減らすためにやはり雰囲気は大事にしてほしかったが、まーそう贅沢も言ってられないか。

『そうですね、思い違いをしていました』

私には所詮あらがう選択肢などないのだ。大いなる力の前にはひれ伏すしかない。皆にとって必要なのは逆巻アンジュの体であって“私”ではないのだから。
自分の意識を遠くにしようと何も考えずにぼーっとベッドに腰掛けていたら急に視界が揺れたので驚いた。

『え?』

何故かカルラに覆いかぶさられた私は彼の行動に一瞬目が点になってしまったが。これが彼なりの始まりの合図という訳か。ならば私はもう考えるのを辞めよう。私が今ここで何か思ったところで、考えすぎてよくない方向に向かいそうだからだ。

「…意識をこちらへ戻せ。何も感じない女に欲情はしない。」

『でもぼーっとしていないと、とても行為が進みそうにないので…』

「…面倒な」

『すいません』

「いいだろう。貴様が私の言う通りにしていればそれなりに良い思いをさせてやる。気を楽にしろ」

『はい』

するりとバスローブを脱がされあらわになった肌に舌を這わされ、触れるか触れないかの軽いタッチで撫でられた。今まで感じたことのないようなゾクリとした感覚。もどかしくて、触るならいっそちゃんと触ってほしいと思いつつもこのもどかしい感覚が気持ちよくてうまく言葉が出てこない。口から出るのは乱れた吐息だけだ。

「息が上がっているぞ」

『んっ、おっおかげ、さまでっつ』

ようやく口にできた単語は読み取れるのか怪しい日本語だった。息を吸うのがやっと、ただ触れられているだけなのになぜこうもおかしくなるのか、気でも触れているのか?と疑いたくなるほど自分の体が自分でもよくわからない程敏感に反応していた。あの母のようには決してなりたくないと思っていたのに、これではそっくりだ。気持ち悪い。自分が気持ち悪い。
嫌悪感から涙がこぼれる。勿論カルラは私が泣いていようが何をしようが全く手はとめず、むしろどんどん大事な所へ迫っていく。足の内側に這わせていた手は上へ上へとのぼり下着越しに手の感触が伝わってくる。

「はじめてとは思えないほどに濡れているな」

少し下着をずらしただけで体液の音が響き渡る。恥ずかしくて耳をふさぎたくなる、これではまるで自分が喜んで体を差し出した痴女ではないか。
最早意味をなさない程に濡れてしまった下着を脱がされ、あらわになったそこにゆっくりとカルラの指を挿入された。挿入された指は様々な方向に曲げられ、先程とは比べ物にならない程大きな音を立てた。未だ体験したことのないような不思議な感覚に襲われ頭がおかしくなってくる。自分が今何をしているのか、何をされているのかそれすらもあやふやになりただただ体に受けた刺激がとても気持ちよくて、それに酔いしれるだけだった。

『あっ…はっんっ…』

「これならいれても問題ないな」

『いれる?』

いれるって何を…?ダメだ頭がうまく回らない。
中で動かされた指がずるっと引き抜かれ快楽の波は終わる。
もっとしてほしい、辞めないでほしい。どこまで行けば終わりなのか、私にはわからないけど意地汚くも催促してしまう。もっと、もっと気持ちよくして。
暫く間が開いてぼーっとしていると、指とは比べ物にならない程大きい物が入り口を圧迫してきた。先ほどの快感は一転びりっと何かが破れるような感覚と痛み。

『いったいっ…』

「多少は我慢しろっ…時期なっれる…っ」

私の中に侵入してきた何かはそのまま深く中に入っていった。あまりの圧迫感と軋むような痛みに腰が引ける。それを逃すものかとがっちりとカルラの手によりホールドされた。腰がゆっくり上下にスライドされ、だんだん痛みがマシになってくる。暫くすると痛みに耐える為に噛んでいた唇が開かれ口からは甘い吐息がこぼれた。
先ほど指でうけた快感よりさらに強い波が襲ってくる。最初はゆっくりとした運動がどんどんペースを上げ早くなっていった。カルラが一番深い所を突くとすごく気持ちがよくて自分から求めるように動いた。

「ふっ、腰が動いているぞ」

『んっぁっ…だってぇ、きもちっい』

「自らそれを口にするとはっ、随分はしたない、なっ」

『うっあっ…』

はしたなくてもなんでもいい。それより気持ちいことをしたい。
もう理性や何もかもが全て抜け落ちて私は獣の様に腰を動かした。快感の波はこれ以上ないだろうと思っても次の波はそれ以上に気持ちいもので私はこれを何回もつづけたら気持ち良すぎておかしくなってしまうのではないかと思った。
徐々に高まる波とそれに比例して迫る排尿に近い感覚が襲ってくる。みっともないと思っても腰の律動はとめられず、ついに出てしまうと思った時快感が今まで感じたことのないほど最高潮に高まり、自分でもわかるほど陰部が収縮していた。これが達するという事なのだろうか。
カルラも私が達した後動きを緩めて中にあったものをずるりと引きぬいた。
もう用は済んだとばかりに、バスローブに身を包み早々と部屋を出ていく。
気怠い身体にむちをうってようやく上半身を起こすと、部屋を出ていこうとするカルラが振り返った。

「貴様の務めは始祖の子を産むことだ、間違っても私の妃になれると思わないことだな」

バタンと大きな音を立てて閉められた部屋は妙な静けさに包まれる。さっきまでの事は現実ではないのではないかと思うほど無音と虚無に包まれた。だが、シーツに敷かれた赤い血と今頃になってどろりと足に垂れてきた白濁の液体がさっきまでの事がちゃんと現実だと教えてくれる。

失われたバージン

(気持ち良くて空虚な喪失だった)




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