世界が、変わった。
いや、別に目の前に可笑しな建物があるわけでも私の頭がおかしくなったわけでもなくて。
見えるのはいつもとなんら変わらない池袋の駅前。ウザったい人混みも雑音も何時もどおり。すばせかとかやると自分がどれだけ他人と全く違うこと考えてるかよく分かるよねぇ。いやいや、今大事なのはそんなことじゃない。
おかしいのは自分でも周りの景色でもなくて、


「だからさぁ、マジなんだってぇ」

「え〜、うっそだぁ〜」


さっきから私の横で間延びした声で話しているカップルの話している話題。


「ホントホント。リアルに見たんだって、首無しライダー!!」

「……はぁ!?」


思わず叫んだ私にビクリと震わせたカップルに、「す、すみませんでした……」と謝ってから、逃げるように駅から出てくる人波と同じ方へ流されていく。
落ち着け、落ち着くんだ自分。別に何時もと変わったことはしてない筈。何時もどおり、学校帰りにちょっと池袋によってこうと思って、それで……。

さっきのカップルだけが話していたなら、「あー、最近原作読み始めた人かなー。分かる分かる、話したくなるよねぇ」くらいにしか思わないだろう。私も最初はそう思ってた。
でも、そんな話をすれ違う誰もがしていて、それに誰もが聞き耳をたてているというのは、いくらなんでもおかしすぎる。まるで、本当にあった事のように。
それだけじゃない。何時もなら何人も見かけるはずの同じ高校の制服を着た人も、今日は一度も見ていないのだ。





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