この世には理解と不能の四文字を組み合わせて出来る「理解不能」という言葉があるが今まで何十年と生き、これまであらゆる万物を理解し尽くしてきた僕の辞書にそんなものは存在し得なかった。理解不能?それは物事を先入観だけで捉える馬鹿が使う言葉だ。確かにそう言った意味では僕にとっての「理解不能な人間」がこの世に数多く存在しているとも言えるだろう。しかし僕は理解の出来ないことがなによりも嫌いだ。この世で最も嫌悪すると言ってもいい。知識欲のない人間はただのゴミ、僕を引き立てるだけに過ぎないのである。そんな「理解不能のゴミ」が新世界の王として君臨しようというこの僕に、果たして意見を申し立てても良いのだろうか?いいや、ダメだ。ダメに決まっているだろう。

「よって君の判決は死刑、今すぐ殺してあげる」
「ち、ちょっと待ってえええ!」

頭の中で(長々と時間をかけて)決断をくだし、さて殺るかと白く滑らかな杖を取り出してワザとらしくそれを構えると、ゴミはキンキン声を張り上げ慌てて僕の袖を掴んだ。なに?もしくだらない事で僕を止めたのなら一週間トイレ掃除させた後に嬲り殺すから、と少し機嫌を悪くしながら言うと「ひぃ!トイレ掃除とか死ぬ前にしたくない!」なんて的外れな叫び声を上げた。やはりこのゴミは馬鹿だ。

「なにがどうなって私を殺すとかいうふざけた結論に到ったのかなリドルくん!」
「リドルくん?君こそふざけるなよ下等生物のくせに僕を呼ぶときはリドル様、もしくはヴォルデモート卿だろう」
「なんて横暴な…!だいたいヴォルデモートなんて白昼堂々呼べるか!捕まるわ!その前にネーミングセンス悪すぎだけどね!」
「アバダケダブ」
「うわあああ嘘ですリドル様最高!ヴォルデモートとかまじかっこいい惚れちゃう!素敵!」
「ふん、やはり君は能無しの下等生物だな。理解不能だ」

ヴォルデモートの名を貶すことは死に値する。そんなこといくら馬鹿でも理解出来るだろうに、わざわざ口にするこいつは真性の馬鹿なのか?いや学習能力が著しく低いのは学生の時から知れている。こいつとの会話はなんて知識に欠けた乏しいものなのだろう、といつも溜め息が出るのにはもう慣れた。

「り、理解不能なのはリドルでしょうが…!いきなり死刑とか言って殺そうとするし昨日までリドルって呼んでたのに様を付けろとかヴォルデモートって呼べとか!意味分からん!」
「君が学生の頃のように今だに僕をリドルと呼ぶからだろう。良いか?僕はヴォルデモートなんだもうリドルなんていうくだらない男じゃない」

そう言うと馬鹿なゴミは顔を真っ赤にして喚き出した。じゃあ何で昨日までリドルって呼ばせてたのよ、とか、嫌なら卒業と同時にヴォルデモートって呼ばせれば良かったのに、とか、挙げ句の果てに馬鹿リドル!とか言い出した時には思わず手が滑って杖の先から緑の閃光を放つところだった。闇の帝王に対して馬鹿だなんて言えるとは、このゴミは相当の阿呆に違いない。

「うるさい女だな。君のそのキンキン声は学生の頃から悩みの種だったよ。もう少し静かに話してくれないか?それと次、馬鹿だなんて言ったら殺す」

理解不能だな。僕に対して一度でも暴言を吐いた馬鹿共はその都度始末してきた。なのに、こんなゴミのような女だけ始末しないなんて、今だにリドルと呼ぶことを赦しているなんて、やっぱり意味が分からない。

「ねえリドル、世界征服なんてやめて私と結婚しようよ」

彼女の意見はゴミのくせになかなか魅力的だった。そう感じた僕が一番、理解不能だ。

110103

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