9月2日 (365日企画)
「名前先輩っ!」
「ん?」
図書館へと伸びる渡り廊下を歩く後ろ姿を見つけた僕は大きな声で彼女を呼び止めた。彼女はくるりと振り返り、「あ、梓君」なんて呑気な声を出す。
立ち止まった彼女の元へと駆け寄った僕に「大丈夫?」と労いの言葉をかける先輩の呑気さに呆れながら、僕は乱れた呼吸を整えながら先輩へと詰め寄った。
「名前先輩!」
「は、はい!」
僕の勢いに気圧された先輩が元気よく返事をする。背筋を伸ばし、僕に対峙した。
「今日、誕生日って本当ですか!?」
「え?あ、うん。すごいね、梓君、よく知ってたね」
「金久保先輩から聞きました」
あぁ、誉君かぁ。と先輩は納得したように頷く。
記念日やらイベント事に頓着のない先輩らしいといえばらしいのだが、笑い事ではない。少なくとも僕にとっては。
「名前先輩、僕は先輩の恋人なのに先輩の誕生日を知りませんでした」
「大丈夫だよ、私も梓君の誕生日知らないから」
「12月です。12月20日。って僕の誕生日なんてどうでもいいんです!どうして何も言ってくれなかったんですか!」
偶然にも金久保先輩に会ったからこうして誕生日だと知ることが出来たものの、もしも会わなければ何も知らずに今日を終えていた。
先輩からしてみたら、誕生日は“毎年やってくる月日”なのかもしれないけれど。僕にとっては先輩が生まれた大切な日なのだと、どうしたら先輩に解ってもらえるのだろうか。
つい感情的になった僕を先輩は目を丸くして見つめ、それから「ごめんね」と言いながら頭を撫でた。
「私にとっての誕生日と梓君にとっての誕生日の意味合いは違っていて当然だもんね。ごめんね、私バカで」
「先輩はバカなんかじゃないですよ。人と感性がズレてるだけです」
「慰められてる……わけないか。うん、梓君の言う通りなんだと思うんだけどね、それでも、うん……梓君になら祝ってもらいたいな、誕生日」
祝ってくれるんでしょう?と小首を傾げてみせた先輩に僕は頷く。あぁでも急だったんでプレゼントは用意出来てませんよ、と苦笑したら「梓君が祝ってくれることがプレゼントじゃん」なんてズルイこと言ってくれちゃって。
仕方ない、プレゼントはまた今度一緒に買いに行こう。
とりあえずは。
「誕生日おめでとうございます、名前先輩」
先輩の誕生日を祝わなくちゃ。
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「嘲笑」の狐塚様から貰いました!!
憧れの方の一人である方なので嬉しい…(T-T)
梓に鼻血ブーな話でした!!!!!☆ミキラッ