貰い物 | ナノ
 another story





人は様々な選択肢の中で生きている。

あの日、彼女に出会っていなければ……
あの時、あんなこと言わなければ……

その時選択した道が正しいか何て誰にも解らない。
人生に答えなど無いのだから。

だが、選択とは、時に人の人生を大きく左右する事である。






これは、一人の少年と、一人の少女の話。






2010年3月30日、午後12時50分。



玄関に座り靴を履き終える。
立ち上がってドアを開け、ふぅと深く深呼吸をした。


「名前……」


ポストに入っていた一枚の手紙で僕らは出会った。
ただの偶然だったかもしれない。
でも、君との出会いが僕を変えてくれたんだ。

なのに、


(どうして、会いに行かなかったんだ……ッ)


名前から来た最後の手紙を思い出し、ギュッと拳を握る。

2012年の3月22日、名前の元に僕は来なかった。
何故だ。
2年後の僕に一体何があった。
僕は、名前の事を忘れてしまったとでも言うのか。

いや、それは無い。
考えたくも無い。


(2年後の「僕」が会いに行かないというのなら、「僕」が会いに行く)


玄関を出て鍵を掛ける。
そして、もう一度ポストを覗いてみる。


ポストの中は空だった。


「ッ、名前……ゴメン」


時計を見る。
現在12時58分。
もうすぐで59分だ。


「今から、今から会いに行くよ」


ポストを閉め、名前の元へ……


カタン。


「……え?」


階段を降りようと足を一歩踏み出したその時。
聞き間違いかもしれない。
でも確かに小さな音で、

ポストが鳴った。


「名前ッ?!」


急いで戻りポストを開けた。
勢いを付け過ぎバンッと音が鳴ってしまったが、今はもう気にしていられなかった。


ポストの中には、懐かしい、一枚の手紙。


急いでいたのか、手紙には皺が寄り、いつもより少し雑に綴られた字。
そして、涙の跡。


「……なんだって……?!」


そこには、驚きの言葉が綴られていた。


『梓、アナタはこの間私のところへ来れるはずがなかった!
ちょうど2年前、2010年の3月30日に事故に遭うの!』


「事故……」


そうか、今日、僕は事故に遭うのか。


『アナタは駅前のアクセサリーショップで私を見つけると思う。
でも待って。
お願い、私を見つけてもそこで待ってて!!』


駅前のアクセサリーショップ。
そこに彼女がいるのか。

名前の手紙を握りしめたまま僕は走り出した。






「ハァ、ハァ……ッ、いた……」


車に注意しながら、反対の歩道からアクセサリーショップを見る。
若干見えにくいけど、いた。

あの日見た時と同じ、名前の姿が。


今すぐ抱きしめたい。
今すぐ伝えたい。

でも、


『私に会いたいなら2年待って、2年後の私に会いに来て。

私はいつまでも待ってるから。
2年後のここでずっと待つから。』


『梓、愛してる』


「待つよ。そして、2年後に君を迎えに行くから」


だから、待ってて、






「……名前」


2年前に住んでいた部屋の前で泣いている彼女の名を呼んだ。
ゆっくりと上げられた顔は涙で濡れてはいるものの、2年前に見た時となんら変わらない。


「あ、ずさ……」
「名前、……遅くなって、ごめん」
「梓、あずさぁ……ッ……!!」


今ここに名前がいる。
ずっと会いたかった名前が。

きつくきつく抱き締める。

そして、ずっと伝えたかった言葉。


「名前……好きだ。貴方を愛しています」










(……なんてこともあったな……)


ソファに座り、フフと笑みが零れる。


「梓?急に笑い出してどうしたの?」
「名前」


「梓?急に笑い出してどうしたの?」
「名前」


コーヒーをテーブルの上に置き、名前が隣に腰掛ける。
僕はそんな名前を抱きしめながら言った。


「ちょっと昔のことを思い出してさ」
「昔?」
「うん。……名前に会えた日の事」
「ああ、あの時ね……」


あれから5年。
今は名前と同居中。
近々結婚の予定もある。

まさに幸せだった。


「梓、」
「ん?」
「ありがとう。待っててくれて。会いに来てくれて」」
「僕こそ、待たせてごめんね。これからはもう、ずっと一緒だ」




―――――――――


ずっと載せれていなくてすみませんでした…!!((゚Д゚ll))

閉鎖なされましたが「青春ボイコット」の時鏈創様からの相互記念でした。
因みにこの話は「青春ボイコット」で完結なされた「時手紙」番外編です。

本当にありがとうございました!!




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