時々思うんだけどさぁ、と苗字は縦に長く積まれた資料をガサリとまた体制を持ち直させながら言った。
「なんだよ」
「…梓はさぁ、恋愛って何の為に有ると思う」
「はあ?」
長い長い、職員室までの廊下。
今日、日直の僕らは先生に頼まれた資料を職員室まで持っていくという試練を任されたハズ。
それが、なんで、こんな話に。
ほら早く、と催促するように資料の山から同じく資料の山を持った(勿論苗字より量は多い)僕に目を向ける。
「別に、そんなこと考えた事も無かったけど…」
「ほほう」
「…何その返答」
「いやいや、馬鹿にしてるんじゃなくてさ、純粋にそうなんかって思っただけ」
「ふうん」
じゃあ苗字はどうなんだよ、とまたまた目で伝えれば彼女は窓の外を見ながら「そうだなぁ…」と呟く。
「恋愛って、子孫残すために有るんだと思う」
「…これまた夢がないね」
「だって、そう思わない?現実的に考えてさ。子供作ってから離婚、とかもあるし。ひどい場合だとできちゃってから別れるカップルもいるでしょ」
「……何でいきなりそんな話なのさ」
さあ、私にもわかんないかな、そうやって窓から視線を離して今度は廊下の先を見据える彼女はこの場所から、廊下の先までを何に例えて見据えているのだろうか。
偶然開いていた廊下のいくつかの窓のうちの一つから風が吹き抜ける。
それは風によって運ばれてきたのかわからないけど、僕の中にストンと入って落ち着いた。
ああ、言えばいいのか、と。
「探そうか」
「え」
「一緒に。その、恋愛がある意味ってやつを」
ぽかんと口を開けている彼女が資料の山をしたに落とすまで、あと3秒。
僕が笑って、呆れて、拾い集めるのが、あと5秒。
一緒に彼女が拾い始めるまで、あと7秒。
君が、
「恋愛って子孫残す為じゃなくて人を愛するためにあるんだね」
と僕の隣で笑うまで、あと