少し昔。
大学生の僕が、まだ高校生だったころ僕には好きな人がいた。
その人はふわりと笑うだけで僕を闇から救ってくれるような人だった。
好きだった。
本当に、本当に。
そして、僕の通っていた星月学園にはもう一人女子がいた。
僕と同じ学年のソイツは僕の好きだった人と違ってサバサバしている性格で、彼女よりも僕の好きだった人のほうが断然、人気だった。
だからかもしれない。
彼女の友人と呼べる人物は、卒業まで指で数えれるほどしかいなかった。
ある日、彼女が僕に好意を寄せていることを知った。
その時にはもう、僕の想い人である人には彼氏がいて、僕は初めて味わう失恋に苦しんでいた。
僕は彼女と付き合い始めた。
始めから愛は無かった。
でも、彼女に触れるうちに。彼女から『すきです』と言われる度に。
僕はいつしか彼女をすきになっていた。
僕が初めに好きだったアノ人のことを話す時に『好きだった』と過去形で言うのは、今でも付き合っていたほうの彼女がすきですきで堪らないからだと思うんだ。
ある日、彼女は言った。
『別れよう』と。
頭が真っ白になった。
彼女は言った『木ノ瀬くんは、月子先輩が好きなんでしょう?』と。
違う。違うんだ。
安心してた。
改めて告白なんてしなくても彼女は隣に居てくれると。
でも違った。
彼女は僕に別れを切り出した。
それは僕達が卒業する2日前のことだった。
彼女は今、どこで何をしているのだろうか。
すきだよ。今でも。
偽物から始まった恋だったけれど、あれからちゃんと本物になったんだ。
明日は日本に久しぶりに帰国する。
数少ない彼女の友人に聞いてあたって彼女を捜そう。
見つけて、改めて気持ちを伝えたら君は今更だって拒否するかな。
それとも
私もだよ。と、僕がすきだったあの笑顔で笑ってくれるのだろうか。
僕的には後者がいいかな。
でも、どちらにしても僕はきっと、
君を捜すのだろう。(日本の空港で立ち止まる僕の肩を)
(誰かが叩いた)