ああ、なんだかなぁ。
「泣いてるの?」
弓道場の横にある木の下、腕に顔をうめて泣いていた状態の僕に近づき、この先輩はこうして意地の悪い言葉わ吐いた。
ハンカチやティッシュでさえも渡してくれないこの人に呆れてしまった。いや、何かを待っているわけではない。
ただ、少し、人のする行動を気にしてしまっただけだ。
「随分と直球なんですね」
「こうやって慰めたほうが私らしいでしょ。もっとオブラートに包んでほしかったら月子呼ぶよ」
「・・いや、#name1#先輩のほうが今の僕には優しいみたいです」
「そっか」
なんでだろう、この人の言葉は容赦ないのにとても心地がいい。
ああ、なんだかなぁ。
ぐるぐるとかき回していくものに内心、ため息を吐く。
「ねぇ、少年」
「・・はい」
「なに悩んでるのかは知らないけどさ、一人で泣かないでよ」
「!」
「一人よりみんなのほうがいい。覚えときなよ」
普段滅多に笑わない先輩の顔がふっと緩んだ。
ああ、ああ、なんだかなぁ。
つられて緩む僕の顔に夕日の赤々とした光が当たって
切なくも温かかった。
*リハビリ短編