『飴玉ってさ。甘いじゃん?』
いきなり彼女がそう言った。
彼女は別に今、飴玉を舐めているわけじゃない。
なのに何故かそう言ったのだ。
「…まあ、確かに甘いですね」
飴玉は甘くて、口に入れやすい。
そういうお菓子なんじゃないだろうか。
僕がもんもんと考えていると、目の前の彼女はいきなり悲しそうな顔をした。
「先輩?」
彼女のいきなりの表情の変化に慌てて名前を呼んでしまった。
すると彼女は、また悲しそうにしながら笑い、こう言った。
『梓は飴玉みたいだね』
僕には何で彼女の表情と飴玉が関係しているのかわからなかった。
だからその理由を知りたくて考える。
考えてる途中で彼女がまた喋り始めた。
『梓はいつも甘い言葉をはいて、行動して。飴玉みたい』
でもね。彼女は言った。
『飴玉は甘いだけじゃなくて溶けちゃう。口の中で転がしている間は甘さで口の中がいっぱいになって幸せだけど、飴玉は甘さと引き換えに小さくなっていくの。だからさ。梓も同じなのかなあって思った。梓もそのうち私に飽きちゃうのかなって』
そこでようやく、あの表情の意味がわかった気がした。
「先輩、飴玉が何で小さいのか知ってます?」
『え。…持ち運びとか簡単だからとかじゃあ…』
「はい。他にも沢山ありますけど、正解です」
僕は人差し指を唇に当て、彼女に向かって微笑んだ。
「沢山、甘い飴玉を持っていれば溶けてもまた新しいものを入れればいいでしょう?」
飴玉をおひとつだけ(僕は例え溶けたとしても先輩が僕を求めてくれる限りずっと隣で甘い愛を囁き続けますよ)