stsk 短編 | ナノ






意地悪なんでしょう?その唇。






私は全然可愛くない。






『東月ぃぃぃ!!!!』

「え?」




私はダン!と東月の机を両手で叩いた。

それと同時に、何だ何だとざわつき始めるクラスメイト。


……まあ大半は、いつものことだとスルーしてるけど。





『なっなんで、私の机の中にあんたの手作り弁当が入ってるのよ…!!』

「あ。それ、俺がお前に食べてもらいたくて作ったやつなんだよ。ちなみに、今日の自信作はミニハンバーグ。」

『なんてことしてくれてるのよォォォ!!!』



ニコニコと笑う東月。

その後、いろいろ言った言葉は「栄養とらないと、いつか倒れちゃうぞ?」という東月の言葉に黙らされてしまうのだった。








もぐもぐ

もぐもぐ




『……ふまい。』


無意識に出た言葉は体じゅうを駆け巡り、熱をもたせていく。

一人、屋上庭園で食べるお弁当。

あんなに大騒ぎした手前、大人しく教室で食べるわけにもいかず持ってきてしまったわけだが。



『……腑に、落ちないわ。』





東月錫也。

私の好きな人。


笑顔がふんわりしてて、王子様みたいで。

それでいて、


幼馴染みの女の子のことが好きでしょうがない人。





私は天の邪鬼。

だから、彼にはどうしてもひねくれたことしか言えない。



お弁当貰って嬉しかった。

綺麗な笑顔を見て安心した。


好き、だと改めて思った。




ポツリ


箸を持つ手に雫が落ちた。

それはとめどなく自分の目から流れ出し、小さな小さな水溜まりをつくっていく。


嫌われてるだろうな、確実に。


何で彼が幼馴染みでもない、ただのクラスメイトの私にわざわざ優しくしてくれるかなんて知らない。

けれど私は、口では嫌だ嫌だと言いながら内心で喜んでいる。

醜い。汚い。





彼が自信作だと言っていたミニハンバーグに雫が当たる。

口に入れたハンバーグはしょっぱかった。











夕方。下校時間。チャイムの音。



『とっ東月…!!』

「あれ。苗字さん?」



長い廊下を走った先に彼は居た。

…いや。

歩いていた、と言ったほうが正しい。




『おっお弁当…!!』

「弁当がどうかした?」

『おっおお美味しかった!!あ、あと!明日っ容器は洗って返す…っから……。』

「…え?わざわざ、それを言いに来てくれたのか?」

『そっそうだったら何か悪いの!?』




うわっ

また可愛くないことを…!!

何言ってんの、自分!!




「錫也〜?」

「どうかしたのか〜?」


「ああ、ごめん!月子!哉太!先に帰っててくれ!」

『……は?』




わかったーと言って、彼の大切な幼馴染みは去っていってしまった。

廊下に残されたのは彼と私だけ。


えっ。ちょっ…!?

二人とも行っちゃったけどいいの!?




「苗字さん」

『な、何…』

「一緒に帰らないか?送ってくよ。」

『っ何言って……!!だっ大体!あんたの幼馴染み、行っちゃったわよ!?いいの!?』

「月子と哉太?
…大丈夫だよ。それに、俺が苗字さんと帰りたいだけだから。」

『っっ!!??』






ぼんっと熱くなる顔。

それを見た彼の口は、三日月のように反っていった。







(そ、そういえばっ)
(ん?)
(自信作のミニハンバーグ…美味しかったわよ…!!)

(……っ、(何でこんなに可愛いんだろう…。))



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なんだこれ\(^p^)/